研究課題/領域番号 |
16K03047
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 則子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20335475)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 女性更年期障害 / 医療 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸時代の医学が閉経して出産や血穢という、女性身体を象徴する事象と無縁になった中高年の女性身体をどのように認識したのかを明らかにするために、医学書の中で「婦人門」に分類されている婦人病を対象に、病とジェンダーの問題を分析するという作業をおこなうものである。 28年度は医療の中で女性がどのように扱われているのかを明らかにする作業を行った。具体的には江戸時代の産婦人科史料とその周辺史料を主たる調査対象として、江戸時代の医療の中で女性身体がどのように認識されていたのか、医者が女性患者に対してどのような診療態度をとったのかを明らかにすることをめざした。 この作業を通じて産科医が産婦たちとよりよい関係を保つための配慮行動をマニュアル化している状況を確認するとともに、江戸時代の産科医が婦人科治療も行っていたことも明らかにできた。 また「女医者」と呼ばれる女医たちの活動についてある程度解明することができた。ただし、一般的には「女医者」は堕胎との関係から史料に登場することが多く、実際に婦人科治療にどの程度関与したのかを明確にするには至らなかった。 もっとも「女医者」が、たとえ実態が堕胎を主に行ったにせよ、表向きは血の道治療を生業としたことを考えると、江戸時代の人々にとって女性の月経トラブルの治療は重要な医療の領域と認識されていたことは確認して良いだろう。今年度の作業を通じて、当初は想定していなかった女性医療者が婦人疾患とどのように関わったのか、という新たな課題も確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は論文「近世後期産科医療の展開と女性~賀川流産科をめぐって」(『アジアジェンダー文化学研究』)を執筆することを通じて、医者が女性患者の身体に対する配慮行動や、女医が婦人科医療(血の道治療)に関わっていることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は日本の医学書を中心に分析を行ったが、29年度は引き続きこの作業を継続するとともに、中国医学書の分析を進めることとする。この作業を通じて、日本と中国の女性身体に対する認識の比較研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料の撮影代として予定していたが、すでにマイクロフィルム化された史料がいくつかあり、史料撮影代を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の調査を通じて、当初想定していなかった女医関係の史料収集の必要性が生じたので、29年度、この収集費用にあてたい。
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