研究課題/領域番号 |
16K03057
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
落合 功 青山学院大学, 経済学部, 教授 (10309619)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国益思想 / 製糖業 / 製塩業 / 地域経済 / 国産化 |
研究実績の概要 |
2016年度は、大きく二つの点を実施した。 第1番目は、『国益思想の源流』(同成社、2016年11月)の刊行である。本書は、武蔵国大師河原村(神奈川県川崎市)に居住した池上幸豊の事績を追いかける中で、18世紀中ごろの国益思想の登場、新田開発事業、砂糖国産化などの特質を明確にした。国益思想の問題は、単に砂糖の問題ではなく、新田開発の問題なども含めて論点としてあるが、逆に近世後期における砂糖国産化の意味をより明瞭にできたと考えている。この池上幸豊の砂糖国産化の動きが、その後の全国への砂糖生産の普及につながることから、1年目にして本書を刊行した意義は大きい。 第2番目は、メキシコ大学院大学での講義である。これは、「The industrial history of salt and sugar」として、大学院生対象に講義した。メキシコの第一次産業も砂糖と塩は重要産業であり、この点も意識しながら、日本との比較で講義をした。講義の場での議論でも、メキシコと日本の比較が話題となり、自分自身の問題関心を高めることに有益なものとなった。なお、本成果は、英語版『経済研究』(青山学院大学経済研究所)第9号に掲載済みである(2017年3月)。また、日本語版は「近現代における製塩業と製糖業」として『日本塩業の研究』第35集に刊行される予定である(近刊)。 以上、2016年度は上記2つが大きな実績であるが、文献などは着実に収集しているところであり、さらなる研究推進の素地も固めつつあったのが本年度の点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は、『国益思想の源流』の本を刊行することが予想以上に早まったこと。また、メキシコ大学院大学での講義依頼が舞い込んできたことにより、本来予定していた、奄美諸島への調査がなされていない。これが確実な成果とならない以上、研究課題が達成できたとは言い難いので、今年度はしっかりと、調査予定を固めていきたい。 ただ、『国益思想の源流』が刊行したことは、成果を世に出したことには間違いないことで、調査だけの進展ではなく、成果を提示した点では着実な一歩といえるだろう。また、メキシコ大学院大学での講義と議論で得られた果実は、2017年度の中に盛り込ませることが可能と言え、その点では、早めの実施はあまり悲観的にはとらえていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、年間予定を固めつつ、奄美諸島への調査を実施したい。この点、どうしても休み期間が限られており、調査が限定されることが想定されるが、なんとか日程のやりくりをしていきたい。この点、かつては、「今年度は調査期間」「来年度はまとめの期間」と、分けて研究を進めることが可能であったが、学事日程や学会への参加などで、容易でないということを前提として考えた方が良いと思っている。その点において認識を変えつつ、調査ー報告ー成果刊行ー報告―調査のサイクルを細目にとって実施するように心がけたい。また、この点を踏まえた成果刊行につなげられるよう作業工程を見直すようにする。 もう一つは、学会等での報告である。今年度も、山東師範大学での国際研究交流への参加と報告を予定しているので、そこでの報告と意見交流を行い、成果をさらに進展できるように考えている。また、別途機会があれば、学会などの場での報告を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、出版刊行に伴う作業が中心となり、出張調査が限定された。また、出張調査では聞き取り作業それに伴うテープ起こし・校閲(人件費)を予定していたが、それもできなかった。こうした点が、今年度の充実させていくべき点であると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記に示した通り、出張調査の予算と、聞き取りのテープ起こし、校閲などの人件費を充実させていくことを考えている。
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