平成28年度以来啓蒙的和算書の調査により、データベースを完成し、報告書を作成する予定であった。しかし2019年後半からのコロナの蔓延により大学の授業もすべてリモートのオンライン授業やハイブリット授業となり、それに時間や労力をとられた。また予定していた調査も2019年2月以来史料所蔵機関の休館や時間制や抽選などによる入館制限、移動の自粛などが障害となりできなくなった。そのため順次補助事業期間の延長を申請して認められ、令和2年度から3年間研究を中断することになった。 その間は、本科学研究については、主としてデジタル・アーカイブの閲覧により、和算書に加え、「重宝記」などの和算書以外の書物で和算の知識を部分的に掲載した書物の収集と分析を行い、データベースに加えてきた。また仙台や広島、名古屋といった三都以外での地域での和算書の系統の整理も行ってきた。このことは不十分ながら成果としてあげられる。またこの間国文学研究資料館・国会図書館などでデジタルアーカイブ化が進行し、研究条件が整ったことはここで記しておきたい。 令和5年度から本務校での授業等もほぼ通常に戻り、史料所蔵機関における閲覧も正常化した。ようやく研究条件が整ったのであるが、最終年度ということで、東京都立中央図書館において補完的な調査を行い、三都の本屋仲間の記録とも照合を行い、データベースの完成にむけて作業を行った。現在、啓蒙的和算書のデータベース総数は、再版も復め430点ほどである。分析対象は、貨幣両替算が中心となるが、それに加え、運賃や商取引についても検討を行った。 ただ長い中断期間を経て十分な分析ができたとはいえず、今後も当研究を続けていきたいと考えている。ただ中間的なデータベースの公開と報告の公開は今年度中にウェブ上で行う予定である。
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