八坂神社では、八坂神社に所蔵される古文書・古記録の原本調査を前々年度・前年度にひきつづき研究代表者・研究分担者がその一員として加わる八坂神社文書編纂委員会と協力しておこなった。具体的には、まず、これまでまったく公にはされてこなかった明治時代以降の「社務日記」の調査および撮影をおこなった。八坂神社では、江戸時代の記録をひきつぐかたちで「社務日記」が明治初年より残されている。これらの調査・撮影をすすめていくことで近世から近代にかけての八坂神社(祇園社)そのものの変化およびそれにともなう周辺環境の変化をあきらかにしていくことができると考えられる。年度末までに明治20年代までの撮影をすることができた。 また、江戸時代以降の祇園社の組織を考えるうえで重要な史料となる祇園社役者であった狛氏の手になる記録「萬覚日記」の翻刻作業もすすめた。「萬覚日記」には、江戸時代の八坂神社内でおこった事象および周辺でおこったできごとなどさまざまな情報が記されており、これらの読解と翻刻により、これまで知られてこなかった江戸時代の諸事実があきらかになると考えられる。「萬覚日記」の読解と翻刻も幕末期まですすむことができた。 いっぽう、清水寺では、研究代表者・研究分担者がその一員として加わる清水寺史編纂委員会と協力して、清水寺に所蔵される古文書・古記録および絵画史料の調査・研究をおこなった。また、清水寺成就院役人の手になる『清水寺成就院日記』の翻刻作業も前々年度・前年度同様にすすめ、江戸時代後期にかけての諸事実があきらかとなった。そして、『清水寺成就院日記』第4巻として法藏館より公刊することができた。 なお、今年度は建仁寺の調査もおこなうことができ、古文書・古記録の写真撮影をすすめることができた。さらには、祇園御旅所の神主家であった大和家所蔵の古文書・古記録の調査もすすめることができた。
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