研究課題/領域番号 |
16K03064
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
若林 千代 沖縄大学, 法経学部, 教授 (30322457)
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研究分担者 |
許 点淑 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (00412867)
金 美恵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00774142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 沖縄 / 朝鮮半島 / 戦争記憶 / 沖縄戦 / 朝鮮戦争 / 動員 / トランスナショナル / 東アジア史 |
研究実績の概要 |
本研究は、沖縄におけるトランスナショナルな戦争記憶について、おもに沖縄と朝鮮半島の関係に焦点を当て、歴史的に検証するものである。平成29年度は、1)基礎資料の収集作業を継続すること、2)関連研究の交流を通じて、考察の枠組みや知見を広げること、の2点について研究をおこなった。 まず、1)基礎資料の収集作業については、研究代表者が平成28年度に申請した、国立公文書館に保存されている日本軍第32軍関連の公文書、とくに「留守名簿」を精査することによって、朝鮮人「軍夫」の動向を把握した。これについては、研究協力者として、沖本富貴子氏の協力を得て、資料収集と同時に、考察したものを論文として発表した。また、研究分担者の金美恵は、沖縄県内に点在する、沖縄戦朝鮮人犠牲者に関する慰霊碑を調査し、設立経緯について関係者インタビューをおこない、それらの碑文について分析した。さらに、研究代表者の若林千代は、米国国立公文書館において、沖縄戦に動員された朝鮮人が米軍の捕虜となった後、どのような経緯を辿っていったかについて、また、朝鮮戦争と沖縄の関係について、とくに住民政策に関連する問題について、米軍や国防総省の資料を精査した。これについては、調査継続となった。 次に、2)関連研究の交流を通じた考察の枠組みや知見を広げることについては、平成29年9月、韓国の東アジア史研究の代表的な研究者である白永瑞氏を招いて、東アジアにおける「新しい人文学」という枠組みと歴史学の刷新に関する、韓国における議論について学んだ。とくに、歴史記憶が政治的問題に直結する東アジアにおいて、険しい過去を振り返ることの意味について新たな知見を得た。また、平成30年3月、沖縄大学で開催された、第11回「強制動員真相究明研究大会」に参加し、民間における戦争動員研究の現状と課題について学んだ。研究協力者の沖本富貴子氏が研究報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、基礎資料の収集作業について、厚生省関連公文書、法務省関連公文書、防衛省防衛研究所歴史資料(内閣府沖縄振興局沖縄戦資料閲覧室)、国立公文書館に保存されている日本軍第32軍関連の公文書、とくに「留守名簿」について、かなりの割合の資料について検討することができた。また、研究分担者の金美恵がおこなった、沖縄県内に点在する、沖縄戦朝鮮人犠牲者に関する慰霊碑を調査についても、ある程度形にして報告することができた。 研究成果についても、資料そのものを公開するには至っていないが、研究分担者および研究協力者が協力して、研究論文や研究ノートとして発表し、また、研究報告をおこない、公開に努めている。 また、朝鮮戦争と沖縄の関係について、とくに住民政策に関連する問題について、米軍や国防総省の資料を精査した。これについては、調査継続となった。 とくに課題としては、米国国立公文書における、沖縄戦に動員された朝鮮人が米軍の捕虜となった後、どのような経緯を辿っていったかについては、現状、その公文書の把握にかなりの時間を要している。米国公文書の分類の点から見ても、調査には時間を要している。資料が複数のRecord Groupにまたがって存在していることはもちろん大きな理由だが、太平洋戦線で捕らえられた朝鮮人捕虜がどの戦場で捕らえられたか、また、そこからどのような経路で朝鮮半島に帰還したか、あるいはしなかったかという点については、まだ調査に時間を要する。 ただ、ハワイ準州(当時)の収容所における朝鮮人捕虜の動向については、ハワイ準州の強制収容所と捕虜に関する先行研究があることがわかり、そうした研究を参照しつつ、調査が進んでいない部分を埋めていくことが可能ではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、最終年度であり、以下の調査と研究報告をおこなう。 国内調査として、国立公文書館(本館およびつくば館)所蔵の日本軍第32軍関連の「留守名簿」について、平成29年度に収集できなかったものを集中的に調査をおこなう。また、国立国会図書館憲政資料室において、日本占領資料に収められている、米国公文書(SCAP文書)のなかの朝鮮人捕虜関連の資料を精査する。また、沖縄県公文書館において、沖縄県公文書館所蔵の米公文書のなかから、捕虜問題に関する資料を精査し、検討をおこなう。 また、海外調査として、米国国立公文書管理局(メリーランド州カレッジパーク)において、平成29年度同様、さらなる調査をおこなう。とくに、捕虜に関する担当部局であった陸軍高級副官室文書の調査、また、朝鮮戦争と沖縄に関して、米極東軍文書の調査をおこなう。 韓国での調査としては、強制動員に関する調査をおこなった研究者や関係者への聞き取りなどをおこなう。 同時に、ハワイ準州の捕虜収容に関して、関連する主題の研究者との研究交流をおこない、ハワイ準州に移送・収容された朝鮮人の規模と実態について、資料や考察を通じて、新たな知見を得たい。 研究報告としては、これまでの資料の概要と得られた知見を研究ノート、また、研究論文として発表する。最終的に、これまで収集した資料の仮目録を作成し、資料のPDFとともに整理する。すでに、国立公文書館で収集した日本軍第32軍資料については、CDR作成済みであるが、こうした資料を閲覧に資するため、整理し直していく作業もおこなう。英文または韓国語の資料については、必要に応じて翻訳をつける。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 物品費等で使用したが、端数が残った。 (使用計画)次年度に繰り越し、物品費、あるいは旅費分として使用する予定である。
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