本研究は、清代モンゴルの駅站に注目し、満洲語・モンゴル語の行政文書および実際に駅站を往来した人々の日記などを収集・分析し、当時の駅站の運用実態、個人レベルの移動体験と認識の変化などを解明することで、駅站を介した人や情報の移動がモンゴル社会に与えた影響とその歴史的意義について考察する。 最終年度にあたる本年度は、2019年9月、2020年1月にモンゴル国で資料の収集を行った。とくに、北京と漠北モンゴルをつなぐ一番の幹線であるアルタイ軍台に関する行政文書・日記史料・地図資料などの収集と分析を重点的に行った。 なかでも地図資料については、前年度末、国際共同研究のかたちでモンゴル国研究者とフレー(現在のウランバートル)からアルタイ軍台に続くフレー以南駅站の分析を行った。その際、部の地図、旗の地図、漠北全土の駅站の分担状況を示した地図、ロシアで作成された地図など駅站に関係する多様な地図の存在が明らかになり、今年度はさらにそれらの調査・収集を進めた。ただ、行政文書については、北京所在の行政文書群の情報を得て、調査を計画していたが、新型コロナ肺炎の影響で調査を断念した。次の課題として残った。 これらの成果は、国内学会、国際シンポジウムで報告した。とくに清代のモンゴル研究者が集まった国際シンポジウムでは多くの研究者と有益な意見交換をすることができた。また共同研究者であるモンゴル人研究者を山形に招聘し、一般学生も聴講できる成果報告会という形で研究会を開催したほか、ウランバートルでも講演する機会を得た。研究成果の社会還元という面では大きな成果を上げた一年であった。他方、これまでの研究成果を本にまとめる予定であったが、出版までは完了できなかった。早急に成果を公開することを今後の課題としたい。
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