本年度の研究計画は、(1)これまでに収集した史料の分析作業の継続と、ミャンマー国立公文書館において、フォローアップの史料調査をおこなうこと、(2)国際ビルマ研究集会において、本研究で得た成果を報告すること、であった。 (1)については、2018年8月に実施した。今回は、20世紀初頭まで調査範囲を広げ、エーヤーワディー・デルタ地域の県役所における吏員任用状況にかんする文書を閲覧、収集した。このほか、吏員任用のルールを定めた文書、ケース・スタディとして利用しうる吏員の個人ファイルを見いだせたので、一昨年、昨年の調査を補足することができた。 (2)については、2018年8月に開催された国際ビルマ研究集会において「停職、解職、そして復職:19世紀後半におけるビルマ人吏員の経験と植民統治」という題目の報告をおこなった。19世紀後半のビルマ人吏員のプロフィールを記録した文書を紹介し、末端の行政機関における人種間の緊張関係など、研究上着目すべき点について述べた。 以上のほか、これまでの研究成果の一端を、論文「19世紀後半におけるビルマ人下級吏員と英植民統治:トングワ県のサークル・ヘッドマンが提出した請願書の意義」として発表した。ビルマ・デルタ地域で、村落からの徴税をおもな任務としていたサークル・ヘッドマンに焦点を合わせ、その任命、異動の過程をあとづけるとともに、県知事あてに提出された請願書を、形式面(用語など)、内容面の双方から分析した。
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