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2018 年度 実施状況報告書

植民地インドのマイスール藩王国における文芸と王権

研究課題

研究課題/領域番号 16K03075
研究機関東京外国語大学

研究代表者

太田 信宏  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (40345319)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードインド史 / 藩王国 / マイスール王国 / カンナダ文学 / 宮廷文学 / 植民地的近代
研究実績の概要

本研究は、植民地インドの有力藩王国のひとつであったマイスール藩王国における現地語カンナダ語による文芸・学芸に着目し、それらの文献に見られる王の権威と権力をめぐる言説を分析する。3年目にあたる本年度は、昨年度同様、マイスール藩王国において19世紀から20世紀前半に著された/出版された伝統的詩文学形式の文芸・学芸作品、並びに、同藩王国の歴史書や古典サンスクリット文献の翻訳をはじめとする散文文献に関して、ロンドンの大英図書館で情報を収集するとともに、一部作品・文献の閲覧と収集を行った。並行して、これまでに収集した作品・文献の分析をすすめ、以下のような点を解明した。
第一に、19世紀前半に著された藩王の生涯や藩王が主催する祭事・行事を題材とする伝統的詩文学形式の作品は、(藩)王を讃えることを目的とする点で、18世紀までの作品と共通する一方で、著者である詩人の(藩)王に対する従属的立場の強調、単純な理想化とは異なるある種の「写実主義」など、新しい特徴が見られる。これについては、学会発表を行った。
第二に、19世紀後半以降に著された藩王の生涯を題材とする文学作品や藩王国の歴史書では、(藩)王権を「ダルマ」といった伝統的な理念・価値規範の護持者として正統化して藩王と臣民との階層序列的な上下の別を強調するよりも、藩王(家)と臣民が喜びや悲しみを共有し分かち合う、いわば「感情の共同体」として藩王国の政治社会が描出されていた。これについては、研究会において口頭発表を行った。
第三に、19世紀末から、藩王の間接的な支援を受けてサンスクリット古典文献の近代的カンナダ語散文全訳が刊行されたこと、そのもとになった散文訳の少なくとも一部は18世紀に既に行われていた可能性が高いことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの調査により、マイスール藩王国内でカンナダ語による伝統的詩文学形式の文芸・学芸作品や散文の歴史書が当初想定していたよりも数多く書かれていたことが判明した。これは調査研究の成果であるが、その一方でそれらの作品・文献の読解と分析に、想定以上の時間と労力を費やすことになっている。そのため、研究成果について学会報告や口頭発表を行ったものの、研究ノートや論文のかたちで成果を公開するには至らなかった。

今後の研究の推進方策

引き続き、マイスール藩王国内で著された/刊行されたカンナダ語の「伝統的」詩文学作品や散文文献の読解と分析を進め、その成果を研究ノートや論文のかたちで公開する。また、これまでに明らかになった同藩王国のカンナダ語による文芸・学芸の特徴とその年代的変遷を総括する。文芸・学芸の変遷を社会状況の変化と連動させながらその歴史的意義を探ることを通じて、本研究課題の最終目標である藩王国における近代のあり方を考察する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)史料となる文献の収集を、昨年度に続き主に大英図書館で行った。文献の写真撮影が認められているため、図書購入のための物品費が当初想定したよりも低く抑えられ、次年度使用額が生じた。
(使用計画)令和元年度は、文献についての補充調査をインドで行うことを予定している。次年度使用額を、インド出張関連の経費に充当することにより、調査をより網羅的なものとする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 喜びと悲しみの王国:マイスール藩王国の伝統的カンナダ語詩文学にみる感情を巡る言説2018

    • 著者名/発表者名
      太田信宏
    • 学会等名
      2018年度第1回FINDAS研究会「情動・感情の歴史的考察」
  • [学会発表] マイスール藩王国の「伝統的」カンナダ語詩文学にみる王の表象2018

    • 著者名/発表者名
      太田信宏
    • 学会等名
      日本南アジア学会第31回全国大会

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公開日: 2019-12-27  

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