研究課題/領域番号 |
16K03078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 久美子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (80252203)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タイ族 / 清 / シャン州 / シプソンパンナー / チェンケン / ムアンヨン / チェンセン / ビルマ |
研究実績の概要 |
2019年度は、1740年代から1750年代にかけての時期に、現在の雲南省南部からミャンマーのシャン州東部を経てタイ国北部に至る地域のタイ族国家を、中国清朝がどのように認識し位置づけていたかついて、英語で研究論文を執筆した。その概要は以下のようである。 現在の雲南省南部国境地域にあったタイ族国家シプソンパンナーの北部に1729年に清朝が普シ耳府を設置して以降、シャン州東部は「普シ耳府辺外」と認識されるようになり、そこに位置したチェントゥン(ケントゥン、ムアンケン)、ムンヨン(ムアンヨン)、チェンケンなどのタイ族国家の動静は清の注意をひくようになった。清の対応からは、シャン州東部を清の境域外にある地域と認識していたことがわかる。清は要害を守って外部勢力の境域内(「我疆」、「内地」)への侵入を防ごうとするとともに、内地の土司であったシプソンパンナーのタイ族支配者がシャン州東部に出ることを禁じた。また、現在のタイ国北部にあったタイ族国家チェンセンがビルマに服属しており、ムンヨンとチェンケンがチェンセンに「所属」しているという情報を、清側はこの時点で得たようである。しかし清はタイ族国家間の関係については十分な知識を持たず、自らの立場から見た解釈をするにとどまっていた。 当初の計画では、1760年代の清緬戦争期をも対象に含めた論文を執筆するつもりであったが、今回は結果として1750年代までの時期のみを対象とすることになった。その理由は、1)清緬戦争期の史料は多く、前の時期とまとめて一つの論文にすることが困難であったため、また2)清緬戦争を通して清のタイ族国家に対する知識が増え認識が改められていくのだが、それを論じる前提として、その前の状況をまず明らかにする必要があると考えたため、であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史料は1770年代のものまで収集し概観したが、実際に研究論文を執筆する段階で、検討対象時期を短く区切って複数の論文に分ける必要があることが分かったため、当初予定した対象時期までの研究結果を執筆するには至らなかった。また、論文原稿完成が提出の締め切りに間に合わず、年度中の論文発表もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に執筆した、1740年代から1750年代にかけての時期を対象とした論文を発表する。1760年代以降の時期を検討対象とした論文の早期執筆を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては、平成28年度に国際学会で発表をおこなわなかったので、その分の予算で2019年度に研究成果発表のための旅行をおこなう計画であったが、適切な発表の場が見つけられずに見送ることとなった。 物品費については、ほぼ当初の予定通り使用した。 2020年度は、執筆済み論文の発表と新たな論文の執筆に注力したい。日本および海外での新型コロナウイルスの流行状況によっては難しいかもしれないが、可能ならば国際学会などでの研究成果発表や海外での史料収集も考えていきたい。
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