研究課題/領域番号 |
16K03078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 久美子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (80252203)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タイ族 / 清 / ビルマ / シプソンパンナー / シャン州 / タイ北部 / チェントゥン / チェンケン |
研究実績の概要 |
1.現在のミャンマーのシャン州東部地域およびタイ国北部地域に対する清の認識が1760年代にどのように変化したかを論じた英語論文‘Qing China’s View of the Eastern Shan States and Northern Thailand in the 1760s’を公表した。その要旨は以下のとおりである。1752年に成立したビルマのコンバウン朝は、タウングー朝時代と同様に、シャン州東部から雲南南部にかけてのタイ族国家を朝貢国として服属させようと、1760年代半ばに同地域に侵攻した。雲南南部を「内地」と見なしていた清は軍を送り、清緬戦争が勃発した。シャン州東部と北タイのタイ族国家は、1766年には一時的に清に帰順し、清もそれらに土司職を与えようとしたが、1767年にはコンバウン朝の影響下に入り、清は直接関与することができなくなった。清は、雲南南部、シャン州東部、北タイ地域のタイ族国家について情報を収集し、これらがかつてからビルマ王朝の影響下にあったことを1768年になって明確に知るに至り、雲南南部のタイ族国家については清の土司でありながらコンバウン朝にも朝貢するのを黙認し、シャン州東部と北タイのタイ族国家については、実質上コンバウン朝に属することを認めたのであった。 2.『清実録』中には、1766年から1767年にかけての関連史料が豊富にあり、シャン州東部・北タイ地域のタイ族国家への、清朝の対応や認識を示すものとして重要である。そこで、史料読解に必要な語句の調査・検討を非常勤研究員に依頼し、それを参考にしながら史料の日本語への全訳を試みた。さらに、それをベースに、中国近世史専門家に依頼して史料の訳注をつくる作業をおこないつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画で、それぞれの年度に約10年~30年の特定の年代を割り振って検討しようとしたが、実際に史料を読み考察を試みると、さらに細かい段階に分けて検討すべきことがわかったため。
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今後の研究の推進方策 |
1766年以降の時代について、中国史料とタイ語史料の両方から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成3年度も新型コロナウイルス流行により海外への渡航がおこなえなかったことが影響して、次年度使用額が生じている。残額は、専門家に依頼しての史料訳注作成や英語論文発表前のネイティブチェックに使用する予定である。
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