研究実績の概要 |
まず、これまでの調査研究の成果の一部を国際敦煌学会(International Conference on Dunhuang Studies, Cambridge 2019、於 連合王国、ケンブリッジ大学、2019年4月17日、18日)にて報告した。報告者は、代表者の坂尻彰宏,連携研究者の岩本篤志・赤木崇敏からなる三名である。 次に、敦煌石窟(莫高窟・楡林窟等)の現地調査を継続し、石窟と供養人像の観察を進めた。楡林窟においては、2017年に本研究の成果の一部として公表した「楡林窟供養人叙録選注」に未収録の第19窟、第20窟、第33窟、第35窟、第38窟を中心に、供養人像の調査と関連する銘文の調査を集中的に行った。調査では、供養人像の寸法、性別、配列、方向、衣服(色・デザイン)、持ち物(香炉・ 笏などの手持ち道具)、装飾(装身具など)等について、本研究で整理した指標に基づいて詳細に記録した。これらの石窟の供養人像は非常に数が多く、すべての調査を終えることはできなかったものの、研究成果をまとめるための準備は終えることができた。銘文についても楡林窟の関係者の協力をえて、引き続き詳細に観察を行うことができた。なお、現地調査では、敦煌・莫高窟でも楡林窟と同じ指標で調査を進め、その結果を踏まえて供養人像分析の指標が、より普遍的なものになるよう指標を調整した。莫高窟で調査した石窟は全部で13窟(第21窟、第29窟、第35窟、第39窟、第44窟、第55窟、第61窟、第98窟、第100窟、第108窟、第156窟、第310窟、第454窟)である。これらの石窟には保存上の理由で開放されていなかったいくつかの石窟も含まれる。 さらに、これまでの研究成果を成果報告書にまとめて印刷するとともに、電子版を代表者が所属する大阪大学の機関リポジトリに登録し、公開した。
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