研究課題/領域番号 |
16K03087
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金子 肇 広島大学, 文学研究科, 教授 (70194917)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国 / 上海 / 工商同業公会 / 税政 / 中国国民党 / 中国共産党 / 中国近代史 / 中国現代史 |
研究実績の概要 |
1.本研究計画の目的は、近現代中国、とりわけ20世紀以降に継起した国家(末期清朝、中華民国及び中華人民共和国)の変遷を踏まえながら、中央政府や地方政府が展開する都市商工業税政と同業団体との関係を系統的に明らかにしていくことにある。対象とする都市は上海とし、分析する時期は20世紀初頭の清朝末期から人民共和国初年の1950年代までに設定する。本年度は、この研究目的に即し、史料の収集、論文の執筆において順調に成果を積み重ねることができた。 2.具体的な成果としては、(1)台湾・香港の先行研究を再整理し、論文作成において課題の設定などに活用することができたこと、(2)先行研究の整理に基づき戦後内戦期(1945~49年)における国民党上海市当局の貨物税徴収・検査工作と工商同業公会との軋轢について論文を執筆したこと、(3)人民共和国成立当初における共産党上海市当局の営業税収税組織化工作と工商同業公会、とりわけ中小・零細商工業者との関係について論文を執筆したこと、以上の3点を上げることができる。なお、上記2本の論文は、来年度別々に他研究者の編になる論文集の一部として公表される予定である。 3.本研究計画に必要な史料を収集するため、2016年9月(7日間)と2017年3月(4日間)に上海市档案館に赴いて精力的に史料調査を実施した。調査対象としたのは、人民共和国成立初期の上海における各工商同業公会とそれら同業公会を統括する工商業聯合会の基層組織に関する档案である。ここで得られた史料が、上記の研究成果に生かされていることは言うまでもない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.本年度の研究実施計画は、(1)関連する先行研究の整理と検討、(2)関連史料のさらなる収集と解析、(3)個別実証テーマの構想と研究成果の公表、の3点であった。本年度において、この3点の有機的なつながりに留意しながら、2本の個別実証論文を執筆することができたのは想定した以上の成果であった。また、上海市档案館に2回にわたり赴いて史料を精査することができた点は、計画の進展に積極的な意味があった。 2.本年度の研究成果は、戦後内戦期から人民共和国初期に集中しているが、これらの成果をこれまで執筆してきた清朝末期から南京国民政府期(1900~1930年代)の成果と関連づけ体系化することに留意した。この点は、今後、本研究計画の成果を著作として取りまとめていく上で極めて有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
1.本年度における研究計画の進展状況を踏まえて、適宜修正すべきところには修正を加えつつ作業を継続していく。 2.引き続き史料の収集・解析の作業を継続し、本年度同様、主に上海市档案館を対象としながら歴史档案(政府・団体の公私文書史料)の収集に努める。歴史学研究としての本研究計画にとって、この作業の不断の継続がもっとも重要である。 3.引き続き実証テーマの構想を進め、論文等の形式で研究成果を公表する。上述した史料の収集と解析を土台として、研究目的に即した個別実証テーマの具体化に努力する。 4.本研究計画における研究成果とこれまで蓄積した研究成果との接合を、本年度以上に意識して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度助成金に残額が生じた理由は、予定した購入図書の価格合計が安価で済んだためである。中国・台湾からの輸入書の実際の価格は、取次店等が発行する新刊目録と異同がある場合が多い。そうしたなかで、残額が4,314円であったのは誤差の範囲といえる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越された助成金と次年度分として請求した助成金を併せた使用計画は、基本的に本年度の枠組みを踏襲する。すなわち、上海での史料調査を中心とした旅費、中国・台湾等で公刊された編纂史料類の購入に関わる物品費が主要な支出項目となり、そこに若干の人件費・謝金が加わる。
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