研究課題/領域番号 |
16K03088
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 准教授 (60314829)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
|
キーワード | 国共内戦期 / 地域社会 / 中国共産党 |
研究実績の概要 |
2016年度は準備段階と位置づけられる。考察の前提となる伝統社会のあり方についてのテーマに取り組んだ。地域社会に元々存在していた社会関係の様相は外来政権(中共政権)の受容を考える上で重要な意味を持っている。それ故に主に19世紀前半の地域社会のリーダーと農民の関係について考察した。 さらに日中戦争、内戦期についての検討も開始した。まず国会図書館、東洋文庫、防衛研究所において資料収集を行い、新聞資料、地図資料、回顧録、文集などの資料を収集することができた。これらは17年度以降の作業にて活用することとなる。内、『大衆日報』『濱海農村』という新聞についてはある程度分析を進めており、特に土地改革の実態についての個別事例をデータとして収集できた。 続いて台湾の中央研究院、台湾図書館などの機関でも文献資料を閲覧・収集した。内戦期の回想録を含む国民党側の資料を数多く発見することができた。これらは来年度も同様に検討することとする。 また戦前から日中戦争期にかけて中国を旅行した日本人の残した旅行記は当時の華北社会についてまた違った視点からの観察記録であると言える。2016年度はこれらについての初歩的な考察を行い、当該時期の中国社会の有様についての知見を深めた。 公表することのできた論文は2本。まず1本目、嘉慶年間の地域社会のリーダー(郷村役)についての論考の内容は以下の通りである。郷村役は伝統中国を理解する上で重要な存在であるが、この地域的分布について考察し、華北ならびに満洲におけるその特徴を明らかにした。これにより伝統中国の地域社会のあり方についての理解の一助が得られた。2本目は日中戦争期の黄河決壊事件を扱う。戦時下河南社会を理解する手がかりとなるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は準備期間と位置づけられるが、国内の各機関、ならびに台湾の中央研究院、台湾図書館での資料調査を行い、日中戦争期、内戦期の資料をいくつか収集することができた。また主として華北地方の地方志DVDを購入することができた為、次年度以降に行う作業の下準備が整いつつあると言える。 項目9で既述の通り、シンポジウムでの発表を1回行い、論文を2本発表する事が出来た。それ故に進捗状況は概ね良好であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は16年度での準備作業に基づき日中戦争期、内戦期の研究を進める。内戦期の華北社会については、現在1947年をピークとする土地改革と地域社会の改編に関する研究に着手しており、2017年度に論考を完成させる予定である。 この論文の執筆に加えて、当時の新聞資料より具体的な事実の抽出につとめる。目下、『大衆日報』と『濱海農村』の二種類の新聞を中心に考察を進めているが、2017年度にはこれを山東南部から隣接する江蘇北部の全域の新聞の全面的調査へと拡大することとする。これまでに入手している新聞に加え、新たに国立国会図書館などの機関に所蔵されている中国関係新聞を用いる。これにより新聞同士の見解の相違、地域のケーススタディの比較が可能となり、客観的な事象の把握を行えると考えている。 それとともに17年度は台湾の中央研究院、台湾図書館、党史館、国史館、法務部調査室での文献調査を16年度に引き続いて実施することとする。内戦期に台湾へと逃れた人びとの残した記録、文集さらに档案は膨大に収蔵されていることがこれまでの作業で判明している。国民党側の史料を用いることで、中国共産党の宣伝とは裏腹に、両党の間で揺れ動く地域社会住民の実態を解明することが出来ると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた中国図書購入費を安価に抑えることができたため、次年度使用額1,098円が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品購入費に組み入れ、当初の計画通り研究を進める。
|