研究課題/領域番号 |
16K03088
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (60314829)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 中国共産党 / 国共内戦 / 地主 / 農村社会 / 中国革命 / 山東省 / 土地改革 |
研究実績の概要 |
本研究課題は中国華北、特に山東省南部を対象として伝統社会から中国共産党の統治下に到る社会変容を考察する。本年度は概ね以下の内容を論じた。 日中戦争期の各種運動は安定した地域を中心に実施された。共産党は当初から地域社会に好意的に迎えられていたわけではなく、敵占区はもちろん、辺縁区のような不安定な地域で極端な政策を実施した場合、それを嫌う人びとの離反と敵への傾斜が発生した。土地政策は、その危険のない地域でのみ実施できたのである。 これに対して内戦期の山東省南部の戦局は日中戦争のそれ以上に混戦状態であった。ところが敵が近接する状況にあったにもかかわらず、穏健な政策は採用されず、貧雇農路線という極端な運動が展開された。 地域社会の住民の中には本来当地域統治者であった国民党と国民政府を支持し、その帰還を待ち望む人も多かった。極度の軍事的危機の高まりの中、彼らを共産党側に引きつける穏健な政策よりは、むしろ彼らを打倒することによって国府への傾斜を食い止める政策を取らざるを得なかったのである。敵性人物に対する根拠の薄弱な逮捕、リンチ、処刑が公然と行われた。その典型が特務に対する“反特闘争”の提唱である。これを動員の手がかりに土改復査、支援前線を複合的に組み合わせた運動が大々的に推進された。 さらに土地改革までの運動は“農民”の範疇で収まっていたのに対して、土改復査以降には村落秩序の周縁にいた人びとも含むようになり、まさに“常民”の運動へと拡大していった。この運動は時として暴走し、過激化の様相を呈する。共産党が運動の大衆化と過激化を容認したというのも否定できないが、それを統御する幹部の質と量が追いついていなかった点も事実であった。国民政府軍の近接故に、それに傾斜する恐れのある敵を排除するテロリズムが蔓延、肯定された。この情況は同地域においては軍事的危機が緩和された1947年冬まで継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は特に内戦期に重点をおいて研究を進め、当該時期に関する論文を2本を発表することが出来た。その内容については項目5で述べたとおりである。 またこの他にも内戦期に関わる書籍に対する書評を発表した。同時に、日中戦争期にいたる時期の東亜同文書院資料を用いた論考も発表し、本研究課題を側面より補強することが出来た。 これらにより日中戦争から内戦期にかけて華北の農村社会の被った変動がより詳細になったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度までの作業により内戦期の山東省南部の地域社会に関する分析は順調に進んだ。30年度ではこの内戦期に関する研究をさらに深化させ、人びとの動員体制の確立に関する論考を発表することを予定している。 加えて30年度は主として清代後期の山東省南部の伝統社会に関する考察に着手し、年度末までに論考を発表することを目標とする。 具体的には山東省南部での調査を実施し、日中戦争期から内戦期の当地に関わる資料を収集するとともに、主として文献を中心に伝統社会内部での社会関係に関わる考察を深めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において4,003円、予定より少額になった為。これは30年度の物品購入費として使用する予定である。
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