研究課題/領域番号 |
16K03090
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小笠原 弘幸 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40542626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トルコ共和国 / イスラム / 世俗化 / オスマン帝国 / 歴史認識 / 国民形成 / ナショナリズム / アタテュルク |
研究実績の概要 |
2017年度における研究実績として、まず『歴史学研究』に論文「オスマン/トルコにおける「イスタンブル征服」の記憶―1453-2016年」を発表した。オスマン帝国史において画期とされるイスタンブル征服という歴史的事件が、その後どのように記憶されていったかを、現代のトルコ共和国に至るまで検討したものである。トルコ共和国におけるオスマン帝国史像は、建国以降揺れ動いていたが、近年はその復権が目覚ましく、ナショナル・アイデンティティの核の一つとなっている。つぎに、論文“The Quest for the Biblical Ancestors: the Legitimacy and Identity of the Ottoman Dynasty in the Fifteenth-sixteenth Centuries”は、オスマン帝国期の宗教的系譜意識についての研究である。この主題は、トルコ共和国期にトルコ民族主義者に批判的に継承されたため、本プロジェクトにとって有益な前提を提供している。また、『史淵』に、パン・トルコ主義者として知られるユースフ・アクチュラの論説「三つの政治路線」の訳注を掲載した。1904年に発表された本論説は、トルコ民族主義のマニフェストとも評され、オスマン帝国末期およびトルコ共和国建国期のエリートたちに大きな影響を与えた。 これに加えて、連携研究者による学会発表2回と著作1点が、本研究の成果の一部として挙げられる。 史料収集としては、8月にトルコ共和国に赴き、イスタンブルの研究機関において関連資料の調査を行った。具体的には、アタテュルク図書館では、オスマン帝国末期からトルコ共和国初期にかけての定期刊行物を調査、国民形成にかかわる記事を収集した。またイスラーム研究センターでは、関連する研究書・研究論文を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、論文2点、訳注1点、学会報告2点、そして単著1点と、堅調であったといえる(連携研究者の業績を含む)。成果発表のみならず、来年度の研究遂行に向けた史料収集も予定通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、本プロジェクトの最終年度であるため、その成果としてトルコ共和国史に焦点をあてた論集を刊行する予定である。これと同時に、学会・研究会報告、史料収集も並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来の計画では、旅費に70万円を計上していたが、次年度の成果報告で用いるために今年度の利用は控えめとした。そのため、次年度使用額が生じている。
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