研究課題/領域番号 |
16K03092
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
ガンバ ガナ 国際教養大学, 国際教養学部, 助教授 (90624825)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 徳王 / 内モンゴル / 中ソ蒙関係 / 戦後 / 民族解放運動 / ノモンハン事件 / ドゴルスレン |
研究実績の概要 |
今年度は、 戦後の中ソ蒙の関係において、内モンゴル問題がいかに話し合われていたかという問題を明らかにするために、日本およびモンゴル国の関係する諸文書館へ足を運び、調査研究を実施し、その成果として、3回学会発表を行い、一つの論文を執筆した。今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための、文献の購入費、出張費、成果発表費などに当てられた。具体的にいえば以下のとおりである。 1.「20世紀前半のモンゴル民族解放運動と徳王」という発表には、20世紀前半のモンゴル民族解放運動における徳王と彼が指導した内モンゴル自治運動の歴史的な位置づけについて考察を行い、新しい主張を提示した。「内モンゴル自治運動におけるノモンハン事件の地政学的な意味」という発表には、地政学的な視点からノモンハン事件の内モンゴル自治運動に与えた影響を検討し、その敗因の一因としてノモンハン事件があげられることができると主張した。「徳王の試み」という発表には、徳王の国家観と民族観について分析を行った。なお、最初の発表を論文としてまとめて、国際モンゴル学会雑誌に提出している。 2.そのほか、本研究計画においては、一つの重要な課題である、ドゴルスレンの問題について、現在、論文を執筆中で、9月に、ほかの専門家の研究成果と一緒に本として出版することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において最も重要な資料がモンゴル国内務省文書館に保存されている、徳王と彼の息子であるドゴルスレンに関する尋問資料であり、その資料を入手できるかどうかということは、本研究が成功するか否かと直接かかわるものであった。幸い、去年、この研究課題の中心人物の親族の協力を得て、これらの資料とはじめてアクセスすることができ、外国人としてはじめて、この貴重な資料を手に入れたということは大きな収穫だと思う。現在、その収集した資料を整理し、論文を執筆中で、9月にモンゴル国において、この課題と関係する国際シンポジウムを開くとともに、本を編著し、出版することを計画している。この本には、申請者の三つの論文が入ることが見込まれており、いずれも、本研究課題に関係するものである。
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今後の研究の推進方策 |
大きな変化はないが、モンゴル国内務省文書館を中心に、戦後外モンゴルに渡った内モンゴル人に関する資料を収集する。28年度の調査を経て、申請者は、ドゴルスレンが当時モンゴル国にほかの18人の内モンゴル人とともに、「日本の特務」として逮捕されたことが分かったので、この18人を中心として、資料収集を行う予定である。 従来の計画通り、オーラル・ヒストリーの観点から、収集した情報のもとで、当事者やその家族に対しインタビュー調査を行い、より説得力のある研究を目指す。ここで、とくに注目したいのは、中国の送還された人々の文化大革命のときの運命のことであり、それについて綿密な調査を実施する。 そのほか、国内外の関係する文書館において資料収集を行う。 収集した資料のもとで、学会発表を行うとともに論文を執筆する。できれば、来年にも一冊の本を成果として編著し、それに通じて、終戦後モンゴル国に渡った内モンゴル人のその後の運命の全体像と、それに伴って現れた中ソのモンゴル政策の一面を究明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリス出張の際の費用が予定より安価にすんだため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、相当長い期間の出張と国際会議の開催、研究成果として本の出版などがあるので、多くの費用がかかることが予想される。具体的には、国際会議費には10万円、本出版には30万円、研究著書の購入には10万円、それ以外は、国内外の出張費にあてる予定である。
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