研究課題/領域番号 |
16K03095
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
唐橋 文 中央大学, 文学部, 教授 (80453679)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シュメール語 / 初期王朝時代 / 宗教祭儀 / ジェンダー / 経済活動 / 女性史 / 古代世界 |
研究実績の概要 |
(1)平成29年度は、紀元前3千年紀後半に盛えたシュメールの都市国家ラガシュで書かれた文書を多角的に研究してするための主な手段としてプロソポグラフィー・データベースの作成を継続した。報告者がデータ抽出を行い、研究補助員2名が「ファイルメーカー」ソフトを用いてダーテ入力を行なった。この一年間に入力したファイル数(=延べ人数)は4,878(1ファイルに1名)で、それらの名前は、支配者妃が最高責任者を務める組織(Emi)に 納入されたmashdariaという贈物の記録や、Emiで働く女性やその子どもたちへのオオムギの配給記録、死者供養の際の支出記録などから抽出された。今までにデータ化した名前は千を超えた。 (2)平成29年11月10ー11日に中央大学多摩ャンパスにおいて "Women's Religious and Economic Roles in Antiquity"と題する国際的ワークショップを主催した。ワークショップには国の内外から11名の研究者が参加し、発表・質疑応答は英語で行われた。(なお、このワークショップに参加が予定されていたもののそれが叶わなかった研究者1名の発表は、日を改めて平成30年2月9日に中央大学多摩ャンパス多摩キャンパスで行なわれた。) (3)支配者妃が最高責任者を務める組織(Emi)に 納入されたmashdareaという贈物の記録(上記1参照)の入力データーをフル活用し、"Female Mashdaria-Gift-Givers in Presargonic Lagash"を執筆し、(2)のワークショップで口頭発表した。このデータの分析から、エリート階級に属する女性たちは、いままで考えられてきたように「男性に代わって贈物を届けている」のではなく、彼女たち自身が「自主的に」行動していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年11月10ー11日に中央大学多摩ャンパスにおいて "Women's Religious and Economic Roles in Antiquity"と題する国際的ワークショップを計画通りに行うことがきたからである。ワークショップには内外から合計12名の研究者が参加し、テーマに沿ってとても興味深い発表がなされ、有意義な議論が交わされた。ワークショップの総括で、参加論文を書籍の形で出版すること、さらにこれからの研究の内容と方向についても意見の交換がなされた。 データベース化の仕事に関しても、研究補助員の入力時間数が200時間を超え、着実にデータは増えている。ただし、できれば、もう少しペースを上げたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成30年度も引続き研究補助員を雇って、スピードアップを図りながらデータの入力を行う。報告者は、データの抽出・分析を行う。(2)都市国家ラガシュの支配者妃をはじめとする女性たちの宗教儀礼における役割についての論文を6月に開催される「シュメール研究会」で口頭発表する。(3)シカゴ大学東洋研究所が所蔵する資料の収集と調査を行う。(4)平成29年11月のワークショップ原稿を報告書の形でまとめ印刷物にする。(5)原稿の書籍化について出版社を決定し、交渉を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国人研究者2名の旅費と滞在費・諸経費が中央大学文学部と人文科学研究所の「外国人研究者受け入れ」に設けられている国際関係予算から支出されたためである。
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備考 |
報告者は、Luis FeliuおよびGonzalo RubioとともにThe First Ninety Years: A Sumerian Celebration in Honor of Miguel Civil (ISBN 978-1-5015-1173-8)の編集に携わった。
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