研究課題/領域番号 |
16K03095
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
唐橋 文 中央大学, 文学部, 教授 (80453679)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シュメール語 / 初期王朝時代 / 宗教祭儀 / ジェンダー / 経済活動 / 女性史 / 古代世界 |
研究実績の概要 |
(1)シュメール初期王朝時代のラガシュ文書から抽出した人名のデータ化を継続した。2019年2月の段階で、ファイル数(1ファイルに1つの名前)は11078を数え、前年度に比べると、約1.5倍のスピードで入力したことになる。 (2)2018年6月シュメール研究会にて「初期王朝時代ラガシュ・テキストにおける女性のマシュダリア奉献者」を口頭発表した。ラガシュの女性たちが自分の経済力を用いて供物を調達していたことが文書から読み取れることを明らかにした。 (3)シカゴ大学東洋学研究所が所蔵する初期王朝時代シュメール文書の調査及びその他の資料収集を行った。 (4)初期王朝時代ラガシュ文書における女性について論文2本を発表した(10. 研究発表の[図書]2件にそれぞれ収められている)。 "Las mujeres en el period presargonico en Lagash: una vision de conjunto”では、エリート層を構成する王家の女性たち、宮廷の女官として働くミドルクラスの女性たち、隷属的な下層階級の女性たちの社会・経済的な役割をまとめた。 ”Female Servants of Royal Household (ar3-tu munus) in the Presargonic Lagash Corpus”では、ar3-tu munus(文字通りには「女性使用人」)と称される宮廷女官に焦点を当て、彼女たちが、宮廷に仕える男性たちと同じように土地を割り当てられていたこと、機織工房の責任者として男性と同じ機能を果たしていたこと、また、男性のように職名を明示されることはなくても彼らに対応する役割を担っていたことなどを明らかにした。 (5)2017年ワークショップ論文の出版交渉をコペンハーゲン大学の共同研究者とともに行い、De Gruyterから出版の合意を得た。Studies in Ancient Near Eastern Records叢書の1冊になる予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度中に、その前年11月に開催した国際ワークショップの参加論文(全部で11本)を、この科研の報告書の形で作成する予定であったが、提出されない論文が1本あり、作成にこぎつけなっかた(他の10本は報告者の手元にある)。
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今後の研究の推進方策 |
(1)引き続き研究補助員を雇って、初期王朝時代シュメールの都市国家ラガシュの遺跡から出土した文書の情報をデータ化していく。報告者は、データの抽出・分析を行う。なお、電子化した情報をウエブ上に公開して、誰もがアクセスできるようにしたい。(2)ラガシュの支配者妃が担う王家の祖先供養についての論文をまとめ、日本オリエント学会発行の欧文学術誌Orientに発表する。(3)8月に開催されるコペンハーゲン大学のワークショップに参加し、ラガシュの支配者妃が行う祖先供養を含めた宗教祭儀について口頭発表する。(4)平成29年度開催の国際ワークショップで口頭発表された論文をまとめ、科研の報告書として作成する。(5)平成29年度開催の国際ワークショップで口頭発表された論文の改訂版を書籍化のために編集する(de Gruyterから出版される予定である)。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、主に、平成30年度に報告書を作する予定で経費を計上していたが計画通りにいかず、その費用が使用されなかったことに由来する。それを、次年度の報告書作成とデータ入力のための研究補助員雇用の費用に充てたい。
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