研究期間の最終年度となる2019年度には、まず中国国民政府の東北農業水利接収について、次いで中国共産党の東北農業水利接収について、これまで収集した資料を分析し、それぞれ成果の取りまとめを進めた。 研究期間全体を通じて、盤山、東遼河、第二松花江、甘南の4地区を事例として、満洲国の農地開発をおもにその戦後の接収からアプローチすることによって検討してきた。食糧増産をはかった満洲国の農地開発は、日本の資金・技術の投入、現地の土地・労働力の徴発によって実施され、その農地は日本人に優先的に配分された。これらの農地は、戦後、中国国民政府、中国共産党によって接収され、復興がはかられた。 この時期の東北農業水利の接収に関しては、国民政府農林部档案や当時の定期刊行物、各地の地方志などを用いて、満洲国末期の農地開発とその戦後の接収の具体的な状況を地域の事例から把握することにつとめた。4地区のうち、国民政府は南部の盤山、東遼河地区を接収したが、国共内戦の激化によって、農地の復興や開発の継続は進まなかった。また中国共産党はこれらの農地開発を東北の「四大灌区(灌漑地区)」とし、その一部は中華人民共和国期に国営農場に再編された。 ただし、2018年度、2019年度には台風や感染症拡大などの影響によって、予定していた海外での資料調査を相次いで延期、中止せざるを得なくなり、接収についての分析には十分ではない部分がある。引き続き課題としたい。
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