研究課題/領域番号 |
16K03101
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
山口 正晃 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60747947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 目録情報の再整理 / 分散経緯 / 真贋判定 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づいて、羅振玉旧蔵敦煌遺書の図版である『貞松堂藏西陲秘籍叢殘』の内容を整理した。その結果、当該図書の目録情報がやや大雑把であることが判明した。 具体的には、初集の目録に「老子殘卷六種」とあるものは実際には七片の可能性があり、また「開蒙要訓」とあるものは何種とは書かれていないが実際には八片の可能性がある。「可能性がある」という曖昧な言い方にならざるを得ないのは、写真が不鮮明なため、にわかには断言しかねるからである。それはともかく、何故このように目録の情報が大雑把なのかというと、二枚の断片であっても、それが同一写本の分断したものである場合、羅氏はそれを「二種」とは数えていないからである。目録上「何種」と記載されているのは、本来別の写本である場合のみなのである。しかし本研究においては、同一写本が複数片に断裂したものについても、「何片」と数える必要がある。なぜならば、その一枚一枚の断片について、他のコレクションの中から接合するものを探す必要があるからである。また、同一写本が分断されて現存しているという状況は、場合によっては「敦煌文献の20世紀前半における分散経緯」にも深く関わる可能性があり、それは本課題の「真贋判定」にも直接関係する問題でもある。その意味において、まずは目録情報の精度を高める必要が生じたことから、当初予定では初集から三集まである中の初集について、初年度では具体的な内容の分析に取り掛かる予定であったが、予定を変更して二集・三集も含めて写真の一枚一枚に基づいて目録情報の再整理を行った。 これによって、二年目以降、一点一点の具体的な検討に入る準備が整ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、当初予定では一年目から『貞松堂藏西陲秘籍叢殘』の初集の具体的な分析作業に入る予定であったが、目録情報の精度を高める必要が生じたことからそれは行わず、二集・三集をも含めてまずは全体の目録の再整理を行った。具体的な分析作業にはまだ手をつけていないため、当初予定よりも遅れていると言わざるを得ないが、ただし、当初は二年目に行う予定であった二集・三集の整理を先に行った、という側面もあるため、実際にはそこまで大きく遅れているわけでもない。以上により、「やや遅れている」という自己評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
目録情報の再整理はすべて終わったため、これに基づいて写本の一点一点について具体的な分析作業に入る予定である。まずは先行研究の有無を調べる。これは一部すでに手をつけているものの、いまだ網羅的には検索していないため、ここから作業に入ることとなる。そのうえで、上述したように、同一写本が断裂して複数枚の断片として残されているケースがいくつかあるため、そうした写本を中心として他のコレクションの所蔵品などとの接合状況について調査してゆく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の一部変更により、敦煌文献の所蔵機関に赴いて写本を実地調査する機会がなかったため、旅費の使用が発生しなかった。また研究成果も論文等の形として発表していないため、人件費や「その他」の項目の支出も発生していない。
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次年度使用額の使用計画 |
写本調査のため、国内外の図書館・博物館・研究機関等に出張する予定である。具体的には、現在のところ予定しているのは敦煌研究院、中国国家図書館、大英博物館、パリ国立図書館である。ただし実際の研究の進行状況によっては、これらの中一部についてはさらに次年度におよぶ可能性もある。また出張とは別に、研究成果を海外で報告する際には、翻訳代等の人件費として使用する予定である。
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