研究課題/領域番号 |
16K03101
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
山口 正晃 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60747947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本伝来古写経 |
研究実績の概要 |
本年度における具体的な研究成果としては、「「中国仏教」の確立と仏名経」(『関西大学東西学術研究所紀要』第51輯、2018年3月予定、ただし発行が遅れており、5月1日現在未刊)がある。これは、当初の研究目的からはやや逸脱しているが、いわばその「副産物」として得られた成果である。すなわち、当初の研究目的である羅振玉『貞松堂藏西陲秘籍叢殘』の目録内容を整理している中で、それが羅振玉が日本に亡命して京都に滞在していた時期と大きく関わっていることから、羅振玉由来あるいはその他の現在日本に所蔵されている古典籍や敦煌写本について調査をすすめた。その過程で、私がこれまで研究してきた仏名経について、敦煌写本と正倉院文書の間に共通する要素を見出だし、それをもとに執筆した論文である。すなわち、仏名経の展開を具体的に跡付けて分析したうえで、「正統」な仏教世界とは異なる、より庶民に近い民間信仰としての仏教世界をそこに見出だし、また敦煌と日本の間で共通する「非正統」な仏教世界の要素が強く見られる点を指摘する。この論文の主旨は、本研究の目的たる「真贋判定」とは直接の関係はない。しかしながら、上述したように本稿はあくまでも本研究における作業の過程で得られた成果である。しかも、非伝世文献が敦煌写本の中にはまま存在しており、それらを伝世文献から得られる情報と照らし合わせてどのように評価するか、どのように扱うべきかという点について、本稿は一つの具体例を提示している。その点においては、「真贋判定」について間接的ながらも寄与する可能性を持つ一つの成果と言いうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画として予定していた『貞松堂藏西陲秘籍叢殘』の目録を整理し、その内容を検討する作業自体は予定通り進行している。この点においてのみ言えば、「おおむね順調に進展している」と言ってよいのだが、ただしこれらの検討結果を、現在の各コレクションに照らして遡及する点に関しては、所期の具体的成果を挙げているとは言いがたい。ただし、「研究実績の概要」において説明したように、その副産物たる成果は挙げているため、ここでは「やや遅れている」に区分した。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、『貞松堂藏西陲秘籍叢殘』の内容に関して検討作業を継続する。ただしこれまでの経緯からして、具体的な成果をここから挙げるのは現段階では難しいかも知れない。そこで、異なるアプローチからの取り組みも進める必要がある。具体的には、羅振玉旧蔵書に限定せず、『世界民間藏中國敦煌文獻』(中国書店)を始めとする、近年続々と公刊・公開されている各コレクションの情報から、それらの旧蔵者を辿ってゆく作業も同時に進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連書籍の購入、および中国(浙江大学)で9月と11月に予定されている国際学会への出張、また中国におけるいくつかのコレクションについて実地調査を予定。
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