研究課題/領域番号 |
16K03102
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研究機関 | 公益財団法人東洋文庫 |
研究代表者 |
原山 隆広 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (40513544)
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研究分担者 |
三浦 徹 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (00199952)
佐藤 健太郎 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (80434372)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヴェラム(皮紙)文書 / 契約文書 / 都市環境 / イスラーム法廷 / 家産管理 |
研究実績の概要 |
2年度目にあたる平成29年度は、前年度に引き続き現地調査を進めたことに加え、モロッコで国際シンポジウムを開催し、本研究課題に関するセッションにて発表報告を行なった。 同シンポジウム"al-Maghrib wa-al-Yaban: Ru'an Tarikhiyah Mutaqati'ah"(モロッコと日本:歴史横断的視座)は、"Ribat Al Koutoub"誌主催/(公財)東洋文庫およびCenter for Cross Cultural Learning共催にて2017年12月27日にモロッコ国立図書館(ラバト)で開催された。このなかで本研究課題に関するセッション"Sina'at al-Wathiqah: Taqdim Majmu' 'Uqud Raqqiyah Maghribiyah"(資料学の方法:モロッコの皮紙契約文書コレクションの研究)を企画し、原山隆広(研究代表者)・三浦徹(研究分担者)・佐藤健太郎(同)・吉村武典(連携研究者)・亀谷学(同)の5名がこれまでの研究成果についてアラビア語で報告した(詳細については研究発表欄を参照)。 モロッコ側からは海外共同研究者のL. Bouchentouf氏(ムハンマド5世大学教授)やM. Aafif氏(同)をはじめとして、'A. al-Sabti氏(同・"Ribat Al Koutoub"誌主筆)、'U. al-Mansuri氏(モロッコ歴史学協会長)、H. 'Azzab氏といった多数の現地研究者が参加し、皮紙契約文書について活発な議論が展開された。 またシンポジウムと併せてモロッコ国立図書館にて同館写本部門長のN. Bensaadoun氏の協力を得て資料所蔵調査を実施した。さらに文書作成地の一つであるメクネスを訪れ、旧市街および郊外地区において対象物件等の実地調査を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の活動については、当初の計画を上回る規模でモロッコでの国際シンポジウムを実施しえたことが特筆すべき成果として挙げられる。 日本における皮紙契約文書の研究状況を現地学界へ向けて発信することが出来た点は勿論として、コメントや質疑応答を通じて本研究課題の進め方に関して現地研究者から助言を受け、同国における皮紙契約文書について新たな知見を得た点が重要である。 とくに現地参加者の一人Khalid Ben Sghir氏から、皮紙という物質的特徴で限定するのではなく、契約文書という機能的特徴に注目することで対象資料の範囲を広げて考察することの必要性が提起されたが、これは本研究課題当初からの問題意識とも合致しており今後の研究計画を進めていく上での指針となる。また皮紙契約文書の家族史や女性史への活用について具体的な可能性が示された点も、研究成果の社会的還元を考えるさいに有益である。 資料・実地調査はモロッコ国内に限定しての実施となったが、前年度調査での課題点を踏まえて着実に進め、平成30年度の最終調査に向けて体制を整えることが出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗状況を踏まえて、本研究課題の最終年度にあたる平成30年度の研究計画は次のように進める。 文書所蔵調査および実地調査:モロッコを主な対象として、ラバトの国立図書館および国立文書館において、ワクフ文書を中心とした資料調査を実施する。とくに皮紙に限定せず、機能面から類似の文書群の残存状況について確認する。またフェスのカラウィーイーン図書館において関連資料を調査する。 海外研究者を(公財)東洋文庫に招聘し、本年度後半に研究セミナーを開催する。皮紙契約文書自体の検討は勿論のこと、文書作成を担った公証人や当時の都市社会といった関連テーマも含めて参加者間で討論を重ねて本研究課題に反映させることを目指す。 以上を踏まえて最終成果の取りまとめを進め、平成31年度に刊行予定の英文論叢(TBRL: The Vellum Contract Documents in Morocco in the Sixteenth to Nineteenth Century, Part II)にて発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度はモロッコ現地調査に加え、同国での国際シンポジウム開催を通じて研究計画通りの海外調査出張を実施することが出来たが、航空券代等の変動によって当初予算額から若干の余剰が生じた。 (使用計画)最終年度(平成30年度)にはモロッコ等からの研究者招聘の他、英語およびアラビア語での研究成果取りまとめを予定している。これら活動を遂行するにあたり、旅費や人件費・謝金として相当額の支出が見込まれるため、それら費用の充足に当てる。
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