研究課題/領域番号 |
16K03107
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋川 健竜 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30361405)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 1812年戦争 / 北米大陸 / アメリカ合衆国 / カナダ |
研究実績の概要 |
本研究課題は、平成28年度秋に追加で採択いただいたものである。所属機関での手続きに多少の時間を要したため、研究活動を始めたのは年度11月以降になり、実質的な活動期間は5ヶ月であった。また本研究課題においては、研究代表者が狭義の専門を離れて新しい領域(カナダ史)に踏み込むことが主要な研究活動になる。 このため、平成28年度については準備期間と位置づけ、申請書に記していた出張は行わなかった。代わりに、1812年戦争を扱うものを中心に、カナダ史とアメリカ史の研究文献と一次資料の入手を行った。特に、この戦争当時のアメリカ大統領であるジェイムズ・マディソンの全集を一括して購入できた。今後の研究の基盤をなす資料である。 これらの書籍を実際に手に取れたのは12月・1月以降であり、その後、年度末にかけて、一部を読み解く作業を継続している。収集文献は、1812年戦争そのものを総括する文献と、より一般的な19世紀カナダ史・アメリカ史の文献とに大別される。前者として、イギリスの新聞をよく調査して米英双方の側からこの戦争を論じたトロイ・ビッカムの研究が有益であり、今後も重要文献として参照したい。後者としては、主要な戦場であるアッパーカナダ(現オンタリオ州)の19世紀史について、ピーター・バスカーヴィルの研究などによって理解を深めるとともに、アメリカ=カナダ関係史を扱ったレジナルド・スチュアートの古典なども通読した。研究代表者の所属するアメリカ太平洋地域研究センターのホームページ上で、一部について短く文献紹介を行う予定である。また、平成29年2月に、近年刊行の世界史論として注目される『「世界史」の世界史』(ミネルヴァ書房、2016年)の書評会に参加し、報告を行った(於NPO-IF世界史研究所)。本課題で取り上げる北米大陸史を世界史全般の中でどう扱えるか考えるきっかけとして、有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間そのものの開始が10月末であったので、研究1年目は、2年目以降の研究活動のための基盤づくりに集中した。期間の短さゆえ、申請書に当初記載したところまで進行していないのは、やむをえないことであると考えている。それでも重要な研究文献の収集を通じて、カナダ史研究という申請者にとっては新規な分野について、研究動向を深く把握するための足がかりは作れたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
カナダ史に関する文献を中心に、北米大陸19世紀にかんする文献と一次資料の収集を継続する。これらの読解を行い、所属するアメリカ太平洋地域研究センターのホームページ上で、一部について短く文献紹介を行う予定である。またアメリカとカナダの歴史学会の動向について、『カナダ史評論』をはじめとする主要学術誌を本格的に検討する。これらを通じてオンタリオとケベックの地域史研究について関連情報を取得し、理解を深める。こうした作業を通じて、一次資料を用いた1812年戦争研究の切り口を構想し、資料館などについての情報も鋭意集めていく。 また日本のアメリカ学会、日本西洋史学会に加え、カナダ学会の年次大会に出席する。日本のカナダ研究者の論点については特に理解を深めたい。研究代表者は既に、日本の指導的なカナダ史研究者数名とは話ができる状態にあるが、学会全体の動向を把握することを前提にして、今後カナダについての調査研究を進めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は平成28年度10月に追加採択されたものであり、手続きにかかった時間を考慮すれば、研究活動の開始は11月からとなった。申請を行った当時は研究1年目に出張を予定していたが、研究期間が実質5ヶ月となったことを踏まえ、出張を行わないこととした。大きな残額が生じたのはこのためである。
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次年度使用額の使用計画 |
研究2年目にあたる本年度は、研究文献や一次資料の購入を継続するほか、国内出張を行う。また研究活動について紹介する印刷も行う予定がある。なお、研究代表者は平成30年度に所属先からサバティカルを取得する予定があるので、国外出張はこの年度に集中して行いたい。その資金を確保するため、平成29年度も科研費を全額執行せず、残額を発生させる予定である。その間、渡航調査の下準備を鋭意進める。平成30年度に海外渡航・調査を行って、平成29年度にかけての残額と平成30年度分の交付金を集中的に執行する。
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