本研究は,13世紀末から15世紀末にかけてハプスブルク家によって展開された前方オーストリア政策を視点に,スイスの国家形成の過程にハプスブルク家や在地貴族がどのように関係づけられるのかを考察したものである。特に,ハプスブルク家による上からの抑圧的封建支配vs.農民による下からの自由獲得のための闘争といったこれまで好まれた構図を見直し,1300年前後のスイス中央山岳地域でのスイス史の前提的現象の再検討,また15世紀後半におけるハプスブルク家による地域秩序の形成とそれへの上部ライン貴族の関与についての考察により,新たなスイス史像に一定の展望を得た。
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