研究課題/領域番号 |
16K03111
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポーランド / メディア史 / 東中欧史 / 文学研究所 / 『クルトゥラ』 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次世界大戦後にローマで発足し、のちにパリ近郊に拠点を移して活動した亡命ポーランド系の「文学研究所」とその発行誌『クルトゥラ』に注目しながら、冷戦期のヨーロッパにおける政治と文化の関係、知識人のネットワーク、在外メディアの役割などの諸問題を歴史学の視点から再検討することを課題としている。 本研究課題にかかわる研究状況の調査を初年度から継続しておこなってきたが、当該年度の調査をつうじて、主としてポーランド国内で、当初の想定を上回るペースで関連する史資料の公刊と多方面からの研究文献の出版が続いている状況が確認できた。あらためて研究状況の全体像を把握するために、研究史の整理の基準を設定し直し、文献の分類と読解を進めている。とりわけ文学研究所にかかわった人物の書簡・文通等の刊行が進んでいることは本研究にとって重要であるが、その内容・範囲ともに多岐にわたっており、史料からえられる情報の意味を精査する必要がある。一昨年度からの懸案である研究動向を整理した論文の準備を進めている。 並行して、1950~60年代の『クルトゥラ』にみられる政治的構想(ギェドロイツとミェロシェフスキによる新しい西方政策と東方政策の主張)の歴史的文脈をふまえた検討を進めている。 また、2019年4月に韓国のソガン大学で「共和政の記憶」をテーマとするセミナーが予定されており、レクチャーを依頼されたことから、本研究の成果をふまえた発表を準備した(4月25日に次のタイトルで報告を行なった。"Vicissitudes of the “Noble Republicanism” in Contemporary Poland)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文学研究所の関連資料については、ネット上の公開と書籍としての刊行が進み、研究計画をたてた時点と比べるとアクセスは容易になっているといえるが、公開されつつある情報が量的に膨大かつ内容的に多方面に及ぶことから、関連する史資料の収集・把握と整理に時間を要している。研究状況を把捉するための基準を立て直し、研究動向の整理とサーヴェイの執筆を引き続き優先的な課題としたい。 『クルトゥラ』誌の検討については、1950~60年代の政治構想の分析を中心に行なっているが、具体的な成果を提示するためには関連する文献等のさらなる調査が必要である。 モンドリィ=ギェドロイツ往復書簡の検討については、先行研究がない白紙状態からの取り組みであり、慎重に読解を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
文学研究所と『クルトゥラ』をめぐる近年のポーランド内外の研究動向を整理し、従来の研究の方向性と残された課題をサーヴェイする論文を執筆することを引き続き優先的な課題とする。 1950~60年代の『クルトゥラ』の記事の分析を進める。そのさい、公刊が進んだギェドロイツとミェロシェフスキの往復書簡の内容との関係にも注意を払いたい。 モンドリィ=ギェドロイツの往復書簡については、引き続き、「ポーランド資料センター」の刊行物『ポーランド月報』を並行史料として参照しながら、読解を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連する図書の購入に遅れが生じたため、残額が生じた。この残額については、次年度の使用額に合わせて遅延した図書の購入に充て、翌年度の研究に使用する予定である。
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