本研究は これまでの科研研究を踏まえて、以下の3つの研究の柱を考えてきた。(1)イタリアにおける大学と都市との関係の考察 中世後期のイタリア都市にあって、世俗的な性格をもつイタリア型大学が都市文化に対して持つ意味を考える。とりわけ、これまでボローニャ大学の創立、法学者の活動、カリキュラムと給与について集めたデータと他の大学や知識人の活動とあわせて研究する。(2)イタリアの都市景観の研究 イタリア都市の例として取り上げられるフィレンツェ、ヴェネツィアも考慮に入れつつ、まずボローニャの都市景観の変化をまとめ、諸都市にも視野を広げて都市景観を総括する。(3)『健康全書』に関する研究 『健康全書』シンポジウムの報告者と連絡を取りながら、図版確認済みである各写本の対照表をつけたかたちで、研究をまとめる。この研究遂行のために、コロナ禍でもオンラインで毎年開催されたイタリア中近世史研究会では毎年報告をしたほか、シンポジウムのパネラー、講演などの学会活動を通じての研究発信に努めた。刊行物としては、『イタリア史を知るための50章』『世界歴史体系イタリア史2中世近世』『イタリア史のフロンティア』などに分担執筆者として参加し、「中世北・中部イタリア都市文化と支配者層」に関わる記述をして、研究成果として関係する研究者に送付した。 当初は、2020年度までの予定であったが、コロナ・ウィルスの流行により、イタリアでの史料調査や景観調査、また日本・イタリアの研究協力者との共同研究ができなくなり、2年にわたって延長した。しかし、コロナ・ウィルス流行のみならず、ウクライナでの戦争勃発によるサーチャージの高騰で当初予定していた予算ではイタリアでの調査は無理と判断し、必要な参考図書を購入して、2023年度に予定されている学会公開講演、日韓西洋中世史研究集会のシンポジウムでの発表につなげることとした。
|