研究課題/領域番号 |
16K03115
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
槇原 茂 島根大学, 教育学部, 教授 (00209412)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共同地 / コモンズ / 公共性 / 農村 / 近現代フランス |
研究実績の概要 |
前年度における研究・調査の結果、事例研究をおこなう対象を東部フランシュ=コンテ地方のドゥー県に設定した。その理由はおもに、同地方の山間地域を中心に共同地が広く維持されてきただけでなく、中世以来連綿とつづいてきたチーズ製造協同組合fruitieresの経営との関係も浮かび上がったからであった。これを踏まえ、平成29年度は、同地域の共同地と協同組合の歴史に関する研究を進めた。このテーマに関する最新の研究を発表したアラン・メロAlain Melo氏の助言を得ながら、ドゥー県での現地調査を集中的におこない、19世紀から20世紀にかけてのチーズ製造組合の動向を概略押さえることができた。加えて、フランシュ=コンテ地方農業史協会のメンバーから聞き取り調査もおこなうこともできた。また、並行して進めたドゥー県文書館の調査の結果、19世紀末に県知事が全コミューン(市町村)に対しておこなった共同地利用に関するアンケートの存在も明らかになった。この資料を集計して統計的な処理をおこなえば、19世紀末における共同地利用の実態について貴重なデータが得られるはずである。 暫定的な見通しながら、共同地を利用した牛の放牧と連結された酪農業、とくにチーズ製造業は、第二次世界大戦後もしばらく維持されており、フランシュ=コンテ地方の農民の共同性の核でありつづけたことを論証できるだろう。この点に関して、村(コミューン)を特定した事例研究をおこなう準備も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の現地調査の結果、研究計画で予定していたフランス中部から東部に対象地域を変えることになった。そして、フランシュ=コンテ地方の共同地の歴史を、同地方のチーズ製造組合の歴史と関連させながら解明していく方向で研究を進めてきたが、このことはしかし、研究当初には予想できなかった多岐にわたる文献・資料収集と読解、集計作業を要することにもなった。したがって、平成29年度中に成果の一部を発表することになっていた当初計画は変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究・調査の結果、(1)フランス革命以降の共同地の歴史の概要、地域的な多様性、(2)フランシュ=コンテ地方の共同地利用の特徴が明らかになっているので、これらの成果を学会発表や雑誌論文のかたちで公表する段階に入っていく。いずれの領域、殊に(2)については、日本ではほとんど知られておらず、歴史学界だけでなく、社会学や農学など隣接諸分野にも成果を伝えていきたい。 現在、収集してきた資史料の読解や分析を鋭意進めており、平成30年度内には少なくとも1本の論文を発表する予定である。
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