本研究課題は、20世紀ドイツの平和主義と平和運動を、ジャーナリズムから扱うものである。とくにヴァイマル共和国期の新聞および雑誌のテキスト分析から、当時の安全や平和主義、平和運動についての知識人の見解を分析し、「戦争」「平和」や「安全」といった問題がドイツでどのように受け止められたか、そしてこれらがジャーナリズムにどのように反映し、またどのようにして平和主義的な世論形成を促すのかについて、検討するものである。資料となるのは、ヴァイマル共和国期の新聞である『ベルリーナー・ターゲブラット』(ベルリン日刊新聞)紙のほか、当時の中道・左派の知識人のフォーラムともいえる『ヴェルトビューネ』(世界舞台)、『ターゲ・ブーフ』(日記)等である。 最終年度である2018年度は、それまでの2年間に引き続き、『ベルリーナー・ターゲブラット』紙を中心に、テキスト分析を進めた。それまで研究代表者が主に扱っていた雑誌記事とは特徴が異なるため、分析は申請時に想定していたよりも困難を極めた。これについては今後もさらに継続して行う必要がある。さらに20世紀後半の西ドイツのジャーナリズムおよび平和主義にまで視野をいれるべく、関連文献の調査も行っている。 さらに今年度は、ドイツのマールバッハにあるドイツ文学博物館をはじめとし、現地の戦争や平和に関する博物館、図書館等の施設を訪れ、展示を見学してドイツの平和主義の歴史の特徴を明らかにするための材料を得た。 本研究課題での資料分析および文献の整理などの成果の一部は、これまでの研究代表者の研究成果と合わせて2019年度の歴史学研究会大会・現代史部会で報告するほか、今後論文や研究報告として広く公表していくことになる。
|