研究課題/領域番号 |
16K03121
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
松戸 清裕 北海学園大学, 法学部, 教授 (10295884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソ連 / 民主主義 / 選挙 / 民意 / 自由 |
研究実績の概要 |
第36回冷戦研究会(2017年5月14日)の基調講演において、2017年1月に刊行した『ソ連という実験 国家が管理する民主主義は可能か』(筑摩選書)に基づいて、ソ連の選挙制度と実態を改めて論じた。その後、「ソヴェト民主主義という実験 もう一つの民主主義の経験から学び得ることはないのか」(『現代思想』2017年10号)において、「民主主義 = 自由民主主義」と意識されがちな今日の状況において社会主義的民主主義というもう一つの民主主義から学ぶ可能性について検討した。 編集委員を務めた『ロシア革命とソ連の世紀』全5巻の刊行を無事に終えた(岩波書店、2017年6~10月刊)。責任編集を務めた第3巻『冷戦と平和共存』の総説「冷戦と平和共存・平和競争」では、冷戦という東西両陣営間の「平和競争(平和的な競争)」において民主主義をめぐる競争がソ連で重視されていたことを指摘した。この論点については、「米ソの冷戦と平和競争」(『歴史地理教育』2017年11号)でも簡潔に整理して提示した。 また、『ロシア革命とソ連の世紀3 冷戦と平和共存』第5章「統制下の『自由』」では、一党制の下で公的な異議申立ての機会が厳しく制限されていた一方で社会生活には様々な「自由」が存在していた様子を描いた。 2017年8~9月および2018年3月にはモスクワのロシア連邦国立文書館でロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を渉猟した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究会での活動、文書館での史料調査のいずれも順調に進展している。 研究成果の公表については、2017年1月に単著『ソ連という実験』を刊行したこと、『ロシア革命とソ連の世紀』全5巻の編集委員を務めたこと、2017年がロシア革命百周年に当たったことから、原稿執筆と講演の依頼が相次ぎ、当初予定していた以上の成果を挙げることができた。 当初予定していなかった成果の主なものが、論文では「ソヴェト民主主義という実験 もう一つの民主主義の経験から学び得ることはないのか」(『現代思想』2017年10号)、講演では、第36回冷戦研究会基調講演(2017年5月14日)、第57回比較経済体制学会全国大会招待講演(2017年9月17日)、日本ジャーナリスト懇話会2017年9月例会招待講演(2017年9月25日)である。これらは、本研究課題の研究内容をより広い文脈(ソ連史全体および民主主義論の文脈)に位置づけるうえで有益であったと考えている。 このため現時点では、全体として当初計画していた以上の進捗を見せていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2016~2017年度に収集した史料や文献を精査し、検討することによって、ポストスターリン期のソヴェト政権と共産党にとっての選挙、民主主義および民意の意味について歴史的・実証的に描く論文に取り組む。これを通じて、民主主義をめぐる議論の多様化に貢献することを目指す。 2017年度に刊行した編著『ロシア革命とソ連の世紀3 冷戦と平和共存』についてロシア史研究会による合評会が企画されているので、そこで出された指摘に基づいて、ポストスターリン期のソ連の国家と社会のあり方についてさらに検討し、当該時期のソ連の選挙と民意についての考察をさらに進める。 2018年9月および2019年3月にはモスクワを出張をおこない、ロシア連邦国立文書館およびロシア国立図書館において本研究課題全体に関わる史料調査を引き続きおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度からの繰り越し額がやや多かったため、2017年度の交付金額を上回る支出があってもなお2018年度への繰り越しが出ることになった。 2018年度は、研究の視野を広げるべくこれまでよりも多くの学会・研究会に参加することを予定しており、繰り越し金も含めてすべての交付金が適切に支出されることになると確信している。
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