研究課題/領域番号 |
16K03121
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
松戸 清裕 北海学園大学, 法学部, 教授 (10295884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソ連 / 社会主義 / 民主主義 |
研究実績の概要 |
比較経済体制学会の学会誌『比較経済研究』に「ソ連社会主義の経験」を発表した(55巻2号、2018年9月)。この論文は、2017年に刊行した単著『ソ連という実験 国家が管理する民主主義は可能か』(筑摩選書)、編著書『ロシア革命とソ連の世紀3 冷戦と平和共存』の総説「冷戦と平和共存・平和競争」、『現代思想』に発表した論文「ソヴェト民主主義という実験 もう一つの民主主義の経験から学び得ることはないのか」に基づいて、ソ連の歴史的な経験を再確認し、「民主主義 = 自由民主主義」と意識されがちな今日の状況において社会主義的民主主義というもう一つの民主主義から学ぶ可能性について検討したものである。 これは単純なソ連擁護論(「ソ連にもよいところはあった」の類)ではない。ソ連の歴史的経験を検討し、社会主義計画経済はもはや発展途上国にとってさえモデルとはなり得ないが、経済格差の深刻なまでの増大とポピュリズムの隆盛によって欧米諸国の民主主義さえ脅かされている状況においては平等を重視した非自由主義的民主主義たる社会主義的民主主義から問題解決の手がかりを引き出すことができるかもしれないとの問題提起をおこなったものであり、「より良い民主主義」をめぐる議論の多様化に貢献し得るものと考えている。 本研究課題の成果を広く世に問うべく、単著の出版企画の準備を進めた。 2018年9月および2019年3月にはモスクワのロシア連邦国立文書館でロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を渉猟した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モスクワの文書館での史料調査は概ね順調に進展している。 2017年がロシア革命百周年に当たった関係で著書・論文の執筆や講演など多くの活動が集中したため、研究成果の発表は上記の論文1本にとどまったが、本研究課題の成果をまとめた単著を出版する企画の準備を進めることができた。 このため、2018年度の研究成果は必ずしも十分とは言えないものの、現時点では、全体として概ね当初計画していた程度の進捗を見せていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2016~2018年度に収集した史料や文献を精査し、検討することによって、ポストスターリン期のソヴェト政権と共産党にとっての選挙、民主主義および民意の意味について歴史的・実証的に描く単著の執筆に取り組む。これを通じて、民主主義をめぐる議論の多様化に貢献することを目指す。 2019年10月にはモスクワに出張し、ロシア連邦国立文書館およびロシア国立図書館において本研究課題全体に関わる最終的な史料調査をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題遂行に当たって参加することが望ましい内容の学会・研究会が予想よりも多かったため、国内旅費が嵩み、予定していた2019年3月のモスクワでの資料調査の費用がまかなえなくなったため、2019年度に支給予定の研究費を余裕を見て30万円前倒し請求した。このため次年度使用額が発生したものである。 前倒し請求の結果、2019年度の研究費は当初予定よりも20万円ほど少なくなるが、消耗品支出などの倹約に努めることで、予定通り研究を進められるよう努める。
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