研究課題/領域番号 |
16K03122
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 古代地中海史 / 東地中海史 / 小アジア / ギリシア文化 / 文化変容 / 文化交流 / 境界域 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、「リキアにおける都市アイデンティティの形成と展開」(2013年度~2015年度)の発展的継続課題である。物理的には、2015年度末にパイロット的な試みとして開催した「小アジアワークショップ」の継続的開催をめざすための研究協力体制を整えることを目的としている。本年度はまず、昨年度末のワークショップにおける海外招聘者の報告論文から3本を選び翻訳した。私自身は1本を担当し、他の2本はワークショップに参加した2名に翻訳を依頼した(それぞれ2017年3月、5月に刊行される)。9月の研究会において「境界意識の表現とその伝播」というタイトルで報告をおこない、古代地中海世界、とりわけギリシア語文化圏において、内なる世界と外界との境界意識の表現がどのように新たな文脈でもちいられるようになってきたかについて考察した。11月には「ミレトスとアテナイ:IG I3 21とMilet 6.3.1020」で報告をおこない、小アジアのミレトスの国制をめぐる問題を取り上げた。同月、関西大学における国際シンポジウムのために来日したChrsitopher Tuplin氏(リヴァプール大学)を東京に招聘してセミナーを開催し、Greeks from a Persian Perspective with a Short Presentation of Glyptic Soldiersというタイトルで、アケメネス朝がギリシア人をどのように描写していたか、またアケメネス朝が戦争をどのように描写していたかについて報告してもらった。 夏季の現地調査は、トルコのクーデター直後であったため、トルコ行きを断念し、ギリシアで現地調査と資料収集をおこなうことにした。また、アテネの碑文博物館で日本人大学院生および研究者の参加の下にギリシア碑文協会のAngelos Matthaiou氏にセミナーを主催してもらった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会の定期的な開催という点では、若干体制作りに難儀しているが、個人の研究進捗状況としてはおおむね予定どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
国際ワークショップの開催については、当初の計画では2017年度末を予定していたが、これを半年から1年遅らせる方向で検討中である。これは2017年度に私自身も関わる他のシンポジウム(国際シンポジウムも含む)が複数あり、さらなるシンポジウムの開催が参加者間の時間調整から考えても難しいからである。そのぶん2017年度は、研究会を複数回開催したい。この中で、次回国際ワークショップでのテーマを確定してゆく。 2017年度は、ギリシアとともにトルコでの現地調査にも入る予定で、そのためのビザも申請している。また、海外研究者との意見交換をおこなう。 個人研究としては、人とモノの移動と交流、とりわけ哲学者や詩人の移動が文化の諸様式の伝播に果たした影響について、とりわけヘレニズム時代に焦点をあてて考察する。5月に開催される西洋史学会の古代史部会の小シンポジウムにおいて、こうした移動と交流が共通の碑文文化を形成していくのに果たした役割について素描する予定でいる。この報告をもとに論文執筆をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
15000円弱というわずかな金額であったため、あえて書籍購入などに充てることはせず、国際ワークショップ開催のための資金として積み増しすることにした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、国際ワークショップ開催費用に充てる。
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