中世後期ロンドンの「外国人」と都市社会

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K03123
• 研究機関: 大妻女子大学
• 研究代表者: 上野 未央 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (20456271)
• 研究分担者: 佐々井 真知 中部大学, 人文学部, 講師 (90635369)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: ロンドン史 / 外国人 / 中世都市

研究実績の概要

2017年度は、中世後期ロンドンにおける「外国人」に関する先行研究の収集・整理に加え、ウェブ上の史料データベースや刊行史料を利用して調査を行った。データベースBibliography of British and Irish Historyを利用した文献調査をすすめるとともに、史料収集のため研究代表者（上野未央）がロンドンに赴き、大英図書館、ロンドン市文書館、イギリス公文書館で調査を行った。先行研究やウェブ上に公開されているデータベースの活用により「外国人」の出身地ごとの特徴を明確化することをこころみた。
また、研究分担者（佐々井真知）は、同職ギルドの記録を利用して、ギルドが「外国人」にどのように対応していったのかという研究を進めた。特に、金細工師ギルドに着目し、ロンドンの人びとと「外国人」との間に起こった問題とその対処方法について検討を行った。従来の研究で注目されがちであった「外国人」商人ではなく、職人としてロンドンに定着した「外国人」について、具体的に明らかにすることをこころみた。
2017年10月には当該課題に関する研究報告のため、中部大学にて中世ロンドン史研究会を開催した。この研究会では、研究代表者（上野）が「15世紀ロンドンにおける『外国人』―出身地・居住地・職業―」、研究分担者（佐々井）が「中世後期ロンドンの同職ギルドと『外国人』―金細工師を中心に―」、研究協力者（田村理恵氏）が「中世後期ヨークシャーの『外国人』商人―ハルでの交易を中心に―」というテーマで、それぞれ報告を行った。研究会での議論を通して、中世後期ロンドンにおける「外国人」を研究する際の問題点が明らかになった。今後、テーマをより限定して研究を行っていくにあたり、その前提として、ロンドンに暮らした「外国人」たちの職業・出身地等を大まかにまとめておく必要があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2017年10月には中世ロンドン史研究会を開き、それまでの研究成果を報告した。先行研究の整理や、近年の研究成果としてウェブ上に公開されているEngland’s Immigrantsのデータベースの利用により「外国人」の出身地ごとの特徴をある程度明らかにすることができた。しかし、2018年1月に、最新の研究成果を収めた研究書が出版されたことで、あらためて研究動向をまとめなおす必要に迫られ、論文の公表には至らなかった。また、研究分担者は、同職ギルドの史料群に絞って検討を行ったが、2017年11月より出産のため研究を一時休むこととなった。以上のことにより、研究課題の進捗状況は、やや遅れている。

今後の研究の推進方策

研究代表者、研究分担者、研究協力者の3名は、2017年度の研究成果を、2018年4月に開催される九州西洋史学会のシンポジウムにおいて報告する（研究分担者については、産休中のため、代読にて報告を行う）。その際の議論をふまえ、研究代表者は2018年5月に開催される中世ヨーロッパ史研究会において研究報告を行う。主として、先行研究の整理に加え、England’s Immigrantsのデータベースの利用により明らかになるロンドン市内の「外国人」の職業や居住地、出身地などの概要を報告する。また、研究代表者は、2018年9月に韓国で開催される、東アジアブリテン史学会にて、当該研究課題に関する研究報告を行う。これらの研究報告の際の議論をふまえて、研究代表者は論文をまとめる予定である。
研究分担者は2018年7月より研究に復帰し、引き続きロンドンの「外国人」に対する、同職ギルドの対応についての研究を行う。その研究成果を、論文としてまとめる。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、主として研究分担者の出産のための休業による。次年度には、研究代表者は海外の学会で研究成果を報告することにしているほか、代表者・分担者ともに研究成果報告のための諸費用が必要となる。そのため旅費を増額することで使用していく予定である。