研究課題/領域番号 |
16K03124
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伏見 岳志 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (70376581)
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研究分担者 |
小原 正 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 講師 (60715035)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メキシコ / 会計史 / 史料学 / データベース |
研究実績の概要 |
本年度は、まずデータベース作成のもととなる帳簿史料の閲覧と複写をおこなった。研究代表者は米国オクラホマ州タルサ大学のヘルムリッチ・アメリカ研究所を訪問し、17世紀メキシコの帳簿や商業書簡、その他関係書類の閲覧をおこなった。いっぽう、研究分担者は、グアテマラの中米総合文書館において、16-17世紀の商業帳簿と徴税記録の調査をおこなった。その結果、帳簿は規則が単一でなく、作成者ごとに略記法や記載項目、使用数字、記入順序などに相当なヴァリエーションがあることが判明した。 また、研究代表者は、ヘルムリッチ研究所の前所属機関であるジルクリース博物館の史料保存担当者と会合を持ち、未整理の史料の内容確認と、収集経緯や史料の分類法、使用されるインクと用紙と合本化の論理についてヒアリングをした。この結果、今回収集した以外の史料が存在する可能性が高いこと、いくつかの帳簿は作成後に史料の順番が変更されたり、加筆、用紙追加がされているため、作成当時の帳簿の状態を確定する必要があることが判明した。 この結果、収集した帳簿を項目ごとにそのままデータベース化することが難しく、まず当時の記入秩序を確定したうえで、ヴァリエーションのある項目を絞り込んだり、均質化する作業が必要になった。この作業は現在進行中である。したがって、当初予定していたデータベース入力項目の決定、データベースの設計、試験的な入力、といった作業は次年度に持ち越しとなった。代替案として、当時の記入秩序が明白な帳簿については、個別のデータベース作成を実施した。とくに、徴税記録については、記入秩序の解明に進展が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集した史料のフォーマットに予想以上にばらつきがあるうえに、いくつかの帳簿は作成当時から変更が加えられていることが判明した。このため、作成当時の状況を復元することや、複数の帳簿に共通するデータベースフォーマットを策定する前に、個々の帳簿ごとに独立したデータベースを試験的に作成することになった。このため、当初予定していた共通入力項目の確定と、これに基づいたデータベース設計の部分は、次年度に持ち越さざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
1.史料収集の継続。メキシコおよびスペインの図書館および文書館に加えて、ポルトガルの国立文書館にも帳簿があることが確認されたので、同機関を収入先に追加する予定である。 2.帳簿の記入論理のさらなる解析。まず、帳簿のフォーマットにヴァリエーションが生じる原因について特定する予定である。現段階では、この違いは依拠する帳簿作成マニュアルの由来するのではなく、作成者の取引規模や品目の差異に基づくと考えられる。このため、帳簿以外の書簡などで、取引の性格についての概要を把握した上で、そこから帳簿作成論理の把握につとめる。 3.商品と貨幣の多元的流通状況の把握。商業書簡の内容分析は、研究の大目的である複数商品と貨幣の流通の解明にもつながるものである。したがって、帳簿論理の解明とデータベース作成と並行して、粗いデータによる流通の近似的理解が達成される。そのうえで、両者を総合させるデータベース構築を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた研究のうち、史料収集については、訪問先でマイクロフィルムやコピーを作成するために必要な複写費用を見込んでいた。しかし、訪問先ではデジタルカメラによる撮影が認められたため、この費用は発生しなかった。 データベースの設計と試験的なデータ入力の部分については、設計の前提となる帳簿の作成論理が予想以上に多様であり、統一基準の策定に時間がかかっているため、設計するまでに達しなかった。このため、データベース構築に必要なソフトウェアを購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に史料収集を予定している機関では、複写費用とその郵送費がかかることは確認済みである。また、今年度実現できなかったデータベース設計をおこなうため、そのソフトウェアの購入も必要となる。次年度使用額は、この2つに充当する予定である。
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