本研究の特徴は、EUの成立を背景とする超国家的性格の普遍的形象への再評価という新たな動向を踏まえつつ、「紀元千年」のヨーロッパについて、政治史およびキリスト教的救済史の観点から初めて総合的に考察したことにある。これまで我が国の研究では、問題の重要性は認識されつつも、異なる分野の主題として扱われるのが実情であった。しかし、世俗的と理解されてきた「政治」と救済史上の終末論・黙示論という「宗教」の密接不可分な関係を明らかにすることで、一個の歴史的世界としての「ヨーロッパ」の理念的地平に新たな認識の可能性を切り拓き、旧来の政治史中心に理解された歴史像を相対化したことに本研究の意義が存する。
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