研究課題/領域番号 |
16K03131
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フェニキア / カルタゴ / 宗教的変容 / 文化的連続性 / 文化的相違性 / 文化的存続性 / 聖域 / 女神 |
研究実績の概要 |
平成28年度は3件の学会発表(口頭発表およびポスター発表)と1件の公開報告会および2か所の海外調査を行った。また、国際学会に出席し、研究課題に関する最新の情報を得ることが出来た。以下、簡潔にその内容を述べる。 まず5月の第66回日本西洋学会大会では、フェニキア人の海外発展について、これまで調査した地中海各地の事例をより視覚的効果も考慮し、ポスター発表として掲示した。特に関心のある女神に関する宗教的変容については、11月の第58回日本オリエント学会大会で、石碑等の銘文や図像を提示しつつ、再度ポスター発表を行った。一方、近年再燃するカルタゴの「幼児犠牲」に関しては、7月の第23回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会で、これまでの研究史とともに最新の学会動向を紹介しつつ、問題を提起した。 11月のASOR(アメリカ・オリエント学会)年次大会では、シチリア島のモティアやキプロス島のイダリオンの発掘報告の最新情報に触れることができ、当該研究に関する国際レベルでの知見をアップデートすることができた。 12月25日から1月9日にかけて、スペイン(カタルーニャ・バレンシア)地方の博物館を中心に出土遺物等を調査し、またイビサ島では現地の考古学者の案内のもと、フェニキア関連の遺跡の現地調査を行った。在地の文化とのちに入植するフェニキア人およびギリシア人のもたらした文化との関係について、本科研の目的でもある文化的発展と変容の観点から、改めて考察するきっかけを得た。なお、このスペインでの成果の一部は、3月のフェニキア・カルタゴ研究会第3回公開報告会において発表した。3月13日から28日にかけて行ったギリシア本土・クレタ方面の調査では、東方のフェニキア文化と西方のフェニキア・カルタゴ文化との類似性・相違性に着目しつつ、地中海を広く東から西にかけて俯瞰することができ、今後の研究の進展に非常に有益であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、予定していた国内での3つの学会発表と研究会の公開報告会を無事に終えることができた。海外調査も当初予定していたギリシア本土・クレタ方面に加え、スペイン(カタルーニャ・バレンシア地方)およびイビサ島(2014年3月に続いて二度目)を訪れることができ、現地の研究者から直接最新の情報を得ることができた。秋のASOR(アメリカ・オリエント学会)の年次大会では、実際に考古学のフィールドを持つ海外の研究者の発表を通して、フェニキア考古学の最前線に触れることができ、今後の研究に大きな示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、国内での学会発表数件と年度末のフェニキア・カルタゴ研究会の公開報告会を予定している。海外調査は今年度は行わず、これまで集めた資料を整理して文章としてまとめることに集中したい。なお、2017年秋にサルディニアで開催される予定であったフェニキア・カルタゴ国際学会が諸藩の事情により1年延期になったので、可能であれば、11月のASOR(アメリカ・オリエント学会)の年次大会に今年も出席し、海外の研究者と情報・意見交換の機会を設けたい。
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