研究課題/領域番号 |
16K03131
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宗教的発展 / 宗教的変容 / 図像表現 / 海外発展 / トフェト / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
平成29年度は2件の学会発表と1件のシンポジウム報告および1件の公開報告会を行った。以下、簡潔にその内容を述べる。 7月には第24回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会で、1月のスペイン、3月のエーゲ海方面の調査の経過報告を兼ねて、特に関心のあるテーマである地中海域出土の女神像について発表した。10月の第59回日本オリエント学会大会では、企画セッション「文化変容の中のアイデンティティーフェニキアの事例を中心にー(企画代表:国士舘大学・江添誠)」で、主に女神の図像表現に焦点を当て、フェニキアの宗教の発展と変容について考察した。大会に先立ち研究会の例会を開催し、小方登氏(京都大学)よりフェニキアの地形の特徴など、氏の夏のシチリア調査の成果も踏まえて話をうかがった。 11月のシンポジウム「古代ギリシア・地中海世界の都市発展と経済繁栄」(企画代表:東京大学・加藤耕一、早稲田大学・小岩正樹)では、古代地中海の多様な文明におけるフェニキアの海外発展の特質をその宗教的観点に着目して報告した。年度末3月のフェニキア・カルタゴ研究会第4回公開報告会では、日本オリエント学会での発表を発展させて、地中海東方と西方では、フェニキアの文化的アイデンティティがいかに保持されあるいは変容していったかについて、江添誠氏、青木真兵氏(神戸山手大学)らの報告も交えて考察した。会場後方においてポスター発表も同時に行い、関心をもつ多くの聴衆の参加を得て社会的な発信もできたと考えている。 また、平成28年度に続きアメリカでのアメリカ・オリエント学会の年次大会に出席し、研究課題に関連する最新の情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は海外調査を行わなかったが、国内での学会発表や公開報告会でこれまでの研究成果の一端を発信することができた。またOxford大学のメーリングリストに参加・登録できたことで、フェニキア・カルタゴ研究の海外の学会動向についてより詳しい情報が得られるようになり、今後の研究に役立てることが出来ると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き国内での学会発表と年度末の研究会の公開報告会を予定している。加えて10月には第9回フェニキア・カルタゴ国際学会(於スペイン・メリダ)での参加・発表が認められており、国際規模での研究成果を体感できる大きな機会と考えている。可能であれば、学会に引き続き、ポルトガル周辺の遺跡の調査も行うことを計画している。 またこれまでの公開報告会の発表をもとに、研究雑誌『フェニキア・カルタゴと古代地中海世界(課題)』の発刊を予定しており、年度内の出版(デジタル出版)を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2017年秋に予定されていた第9回フェニキア・カルタゴ国際学会の開催が、主催者側の事情で1年延期され、2018年10月に行われることになった。そのため、29年度の残額は、30年度の国際学会参加のための渡航費用その他に充てる予定である。
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