研究課題/領域番号 |
16K03131
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 民族 / ナショナリズム / 伝承 / 考古学的遺物 / 大西洋沿岸部 / 河川交易 / 先住民社会 / 文字 |
研究実績の概要 |
令和元年度(2019年)は2件の学会発表を行った。まず、平成31年(2019年)3月に放送大学東京文京学習センターで行ったフェニキア・カルタゴ研究会第5回公開報告会の内容を発展させ、第69回日本西洋史学会大会(於静岡大学)で以下の小シンポジウムを企画した。「古代地中海世界における人々の移動とネットワーク-Identity, Ethnicity, Acculturation」と題し、ギリシア史・長谷川岳男氏(東洋大学)、ローマ史(宮嵜麻子氏 (東洋大学)、フェニキア・カルタゴ史・青木真兵氏(神戸山手大学)の三氏にそれぞれ発表をお願いし、ギリシア史・師尾晶子氏(千葉商科大学)には総括的コメントをお願いした。自身は本科研のテーマと重なる「古代地中海世界におけるフェニキアの宗教の発展と変容」について発表したが、特にフェニキア・カルタゴ史の視点から、移動がもたらす文化接触や文化変容にともなう宗教的アイデンティティーに関しての問題提起を行った。7月には第26回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会で、地中海を超えた大西洋沿岸部におけるフェニキア人の活動について、2018年秋のスペイン・ポルトガル調査の成果も踏まえつつ、文献および考古学の知見も交えて発表した。ポルトガルにおいて、フェニキア関連の発掘調査が本格化したのが1980年代半ば以降ということもあり、これまで古代のポルトガルに関する情報はわが国においてはほとんど知られてこなかった。南部アルガルヴェ地方のカストロ・マリン遺跡やテージョ川河口周辺の遺跡の地理的・地形的状況もあわせて調査できたことは非常に有益であり、内陸の先住民社会との河川交易についても今後の課題としていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月8日に開催を予定していたフェニキア・カルタゴ研究会第6回公開報告会を、今般の新型コロナウィルス感染拡大防止のため、政府の指針に従ってやむを得ず中止した。毎年、年度末に行ってきた報告会は年度ごとの振り返りであり、また研究成果を社会に向けて発信する大きな研究発表の場でもあったので残念である。すでに発表者も決定し、プログラムも公表して参加募集も行っていたため、2020年3月の報告会はいったん中止とし、そのため研究期間を1年延長することで対応した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の新型コロナウィルスの感染状況にもよるが、3月に一旦中止した研究会の公開報告会を今年度中に改めて開催することを目標としたい。あわせて、すでに企画している研究雑誌『フェニキア・カルタゴと古代地中海世界』の発刊も最終年度中に間に合うように準備したい。現状では、今後しばらく海外での実地調査を行うことは難しいかもしれないが、世界各地の研究者とのネットワークは、Oxford のメーリングリストから得られる情報等で続いている。情報収集とこれまでの研究の総括をあわせて行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月8日(日)に予定していたフェニキア・カルタゴ研究会第6回公開報告会を、新型コロナウィルス感染拡大防止のため一旦中止とした。開催のための会場費・交通費などの諸費用は次年度に繰り越すこととし、再度の開催時に充当したい。
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