研究課題/領域番号 |
16K03131
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (80459940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化変容 / フェニキア語 / アイデンティティ / ネットワーク / 人の移動 / 海外発展 / 衛星画像 / 地形データ |
研究実績の概要 |
令和2年度(2020年度)は、1件の口頭発表と2件の学術書に収載された研究成果が主な実績となる。学術書の一件目は、2020年11月に公刊された『中東・オリエント文化事典』で、「フェニキア語とフェニキア人」に関する項目を分担執筆した。二件目は、地中海圏都市のダイナミズムをテーマとした、慶應義塾大学の極東証券寄付講座での講義内容を踏まえての論考である(2021年3月刊「フェニキア人の海外ネットワーク-前1千年紀前半の地中海世界」神崎忠昭・長谷部史彦編著『地中海圏都市の活力と変貌』所収)。両方とも、自身の研究課題の核心をなすフェニキア人の「アイデンティティ」や「人の移動」の問題とも関連し、研究を見つめ直し昇華させる良い機会となった。口頭発表は、昨年度、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、一旦中止となったフェニキア・カルタゴ研究会の第6回公開報告会(Zoom によるオンラインで2021年3月に実施)において、「フェニキア・カルタゴ研究の現状と課題」と題して発表した。古代地中海世界史分野におけるギリシア・ローマ研究との比較を交えつつ、近年の国際学会の発表の傾向や研究動向を分析し、フェニキア・カルタゴ研究の置かれた現状と課題を紹介し報告した。なお他にも、文献史料や考古資料等を用いる従来の歴史的側面からのアプローチではなく、衛星画像や地形データを活用した、歴史地理学的観点からの考察を、環境地理学が専門の京都大学・小方登氏にお願いした。また、卒業論文の発表や修士論文の中間報告など、若手の発表の場にも繋げることができ、多角的な内容を盛り込んだものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、大学等の授業や関連講座などがオンラインに切り替わったことで、その準備に予想外の時間がかかったこと、図書館などの公的施設が閉館し、資料の閲覧が難しかったことなど、研究課題をさらに推進させ、深化させる時間や場所を確保することが非常に難しく、全体的な研究の総括まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、新型コロナウィルス感染拡大により、一旦開催を延期したフェニキア・カルタゴ研究会第6回公開報告会を、今年度はZoomを用いてオンラインに切り替え、新たに若手の発表を加えて行うことができた。次年度も対面・オンライン、いずれかの可能性を探りつつ、継続的に報告会を開催することを目標としたい。海外での現地調査は次年度も難しい可能性が高いが、一方で、海外の学会や研究会にオンラインで参加できる機会も増えたので、最新の研究情報に常にアップデートして、最終年度の研究の総括をあわせて行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、毎年、年度末に行っている研究会の公開報告会を対面で行う場合を想定し、開催のための会場費や出席者(発表者)の交通費等の諸費用を次年度に繰り越すこととし、開催時の諸費用に充当したい。なお、今年度はオンラインによる開催としたため、費用の発生は最小限に抑えられた。
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