研究課題/領域番号 |
16K03136
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 健夫 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (30063746)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロシアドイツ人 / メンノ派 / ハルビン / 難民 / 移住 / パラグアイ |
研究実績の概要 |
18世紀末以降にヴォルガ地方や南ロシアに大量に移住したドイツ人(19世紀末に約180万人)は帝政末期のロシア化政策、第一次世界大戦、社会主義革命、内戦、飢饉のなかで多くの人びとが難民としてドイツや南北アメリカに移住したが、スターリン時代の1920年代末にもかなりの数が不法に国境を越えてハルビンに逃げてきた。本研究はそうしたハルビンのロシアドイツ人難民の生活と再移住(とりわけパラグアイ、ブラジルへの移住)の実態を解明し、民族的なマイノリティの社会経済的諸問題を考察することを目的とする。 平成28年度においては、すでに収集してあるアメリカ福音派ルター派教会文書館(シカゴ)所蔵の史料(アメリカ合衆国のルター派本部とハルビンの宣教師との往復書簡等)を分析し、ハルビンでのロシアドイツ人難民の貧しい生活の実状を明らかにし、そして、大恐慌のなかで難民受入れを拒否する国々(カナダ、アメリカ合衆国等)があるなかでパラグアイとブラジルへの移住が実現した経緯を明らかにすることができた。 そして、実際の再移住については、とくにパラグアイを研究対象とし、平成28年9月に当地に出張し、ロシアドイツ人(メンノ派)の入植地フェルンハイムの文書館で資料(文書、写真)を収集し、それを分析した。その結果、ハルビンからフェルンハイムへの移住(1932年春と1934年春)の経過(フランス経由、人数等)、移住直後とその後の彼らの社会経済生活、フェルンハイムのあるチャコ地方のその他のメンノ派入植地の分布等を明らかにすることができた。 以上の研究を踏まえて平成29年1月7日には中間的な報告「スターリン体制を逃れるメンノ派教徒―南ロシアからシベリア、ハルビン、そしてパラグアイへ」を西洋経済史報告会(早稲田大学)で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラグアイへの出張では、フェルンハイムの文書館で、ハルビンからのメンノ派教徒の移住について、当事者の回想録や当時の写真等々の貴重な関連資料を収集することができた。パラグアイで収集した以上の資料およびこれまでに収集してあるアメリカ福音派ルター派教会文書館所蔵の史料の分析も順調に進んでおり、研究の全貌が見えてきていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ハルビンのロシアドイツ人(ルター派とメンノ派)の当地での社会経済生活と再移住問題について平成28年度における資料分析をさらに続行するとともに、平成29年度には、すでに収集してあるアメリカメンノ派文書館(ノースニュートン)所蔵の史料を分析し、8月にはドイツ(メンノ派歴史協会文書館等)、フランス(マルセーユ、ボルドー、ルア―ヴルの文書館)およびポーランド(シュテッティンのハルビン協会)に出張し、そこで得られる資料を分析し、メンノ派教徒のハルビンでの社会経済生活と再移住問題、さらに彼らのパラグアイ移住の経過(船舶のルート、人数、衛生検査、支援活動等)について、一層の解明に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
受領額のほぼすべてを支出したが、希望した文献の購入の手続きがスムースにできなかっため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の未使用額は希望していた文献の購入の費用に充てるとともに、今年度の受領予定額は、8月に予定しているヨーロッパ(ドイツ、フランス、ポーランド)出張(2週間)および関連文献の購入等の費用に使用する。
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