「中世ロシアの国家・教会関係の緊密化の人的研究」の研究において、昨年に一応のまとめの成果(「14世紀後半から15世紀初頭のモスクワの国家と教会ー府主教宮廷と大公宮廷との人的関係を中心に」)をだしたが、これらを全てまとめて刊行する意図を実現するために、今年度はこれまでやり残してきた緊密化の研究を法的側面から深めた。具体的には、全ルーシ的な緊密化ではなく、特定の地域のみで見られる緊密化現象が対象であり、13-15世紀のものとされる「ノヴゴロドのフセヴォロド大公の教会規定」の研究を進めた。これはまだ原稿の提出にはこぎ着けていないが、既に最終段階に入っている。また、教会における緊密化の具体的実態を探るために「府主教ヨアン2世の教会規定」の研究も進めた。 他には刊行した成果として、時期はやや課題より後になるが、近世のロシア、ウクライナ、ポーランドにおける教会合同の研究動向をまとめて発表した(「フィレンツェ合同のロシア、ウクライナ、ポーランド地域への波及」)。その他は近世ロシアの聖俗関係について、「第三ローマ」論についても原稿を提出した。 こうした成果は、その一方で、夏期のモスクワ渡航時にモスクワのステパノーヴィチ博士より受けた貴重な助言を受けてのものでもある。博士とはとりわけ本科研課題についての検討を縁にして、今年、或いは来年度にも来日を要請しており、研究会等で更に本研究に関する議論を深めていきたい。
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