研究課題/領域番号 |
16K03145
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研究機関 | 太成学院大学 |
研究代表者 |
黒川 正剛 太成学院大学, 人間学部, 教授 (30342231)
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研究分担者 |
楠 義彦 東北学院大学, 文学部, 教授 (20234429)
小林 繁子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20706288)
谷口 智子 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (00363911)
福田 真希 中部大学, 全学共通教育部, 講師 (00711160)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的周縁者 / メディア / 魔女 / 宗教改革 / 植民地 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近世ヨーロッパとラテンアメリカにおける社会的周縁者の創出とメディアの関係を明らかにすること、換言すれば、「近代化」の過程における「他者」の創造・排除と印刷物を始めとする多様なメディアの関係について新たな知見を得ることにある。 平成28年度は、今後、近世のヨーロッパとラテンアメリカにおける具体的な社会的周縁者を史料分析から摘出し、個別事例を蓄積するため、史料の利用環境の整備を最優先に進めた。本研究の基盤史料となるマイクロフィルム「ヨーロッパ・アメリカ魔女文献コレクション」(Witchcraft in Europe and America: Primary Source Media)から11リールと史料の読み取りに必要なマイクロフィルムスキャナ・リーダープリンタを購入した。 研究の成果報告として、第66回日本西洋史学会大会の小シンポジウム「魔女研究の新潮流―メディア、領域侵犯、グローバル・ヒストリー」(5月22日(日)、慶應義塾大学)において研究代表者と三名の研究分担者がパネラー、コメンテーターとして参加し、本研究との関連性を念頭に置いた報告を行った。 12月18日(日)に愛知県立大学サテライトキャンパスにおいて共同研究会を開催し、研究の進捗状況について情報交換し、研究内容の共有化をはかった。研究代表者が本研究の「全体構想」について報告したあと、四人の研究分担者がドイツ、イングランド、フランス、ラテンアメリカにおける社会的周縁者とメディアの関係に関する研究報告を行い、次年度の研究の方向性について確認した。 ラテンアメリカを担当する研究分担者は、平成29年3月にスペインに史料調査に赴き、史料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)研究に必要不可欠な環境の整備を行うことができた(マイクロフィルム「ヨーロッパ・アメリカ魔女文献コレクション」11リール、及びマイクロフィルムスキャナ・リーダープリンタの購入)。 (2)第66回日本西洋史学会大会の小シンポジウム「魔女研究の新潮流―メディア、領域侵犯、グローバル・ヒストリー」において本研究との関連性を念頭に置いた報告を行うことができた。研究代表者の黒川正剛が「表象としての魔女」、研究分担者の谷口智子が「表象と媒介者―アンデスの悪魔・魔術師・魔女」を報告し、小林繁子がコメントを担当した。尚、司会は楠義彦が務めた。 (3)愛知県立大学サテライトキャンパスで行われた共同研究会では、黒川が本研究の全体構想について報告し、小林が「神罰の聖と俗―いかに魔女を罰するべきか」、楠が「政治的弱者から社会的周縁者へ」、福田真希が「ポレ一味の公開処刑(1909年1月11日)とメディア」、谷口が「セクトと背教―C・アルボルノス『功績報告書』の証言から見るタキ・オンコイ、ワカ、偶像崇拝」の題目で研究を報告し、相互の研究の進捗状況を確認し、議論を深めることができた。 (4)谷口は史料を収集するため、平成29年3月にスペインに調査に赴き、史料を収集することができた。 ただ、平成28年度は計画していたマイクロフィルム史料のデジタル化を進めることができなかったため、次年度に進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度の研究成果を踏まえて、各研究分担者が担当している領域において析出した個別事例を「近代化」の問題系のなかで分析する。具体的には、フランス王国、イングランド王国、神聖ローマ帝国、及びラテンアメリカ植民地における「社会的周縁者(他者)・メディア・近代化」の三者間に想定される共犯的な連関性を比較・交流の視点から解明することを目指す。 尚、平成28年度末をもってフランス担当の研究分担者が事情により、研究メンバーではなくなったため、平成29年度から中世末・近世ドイツ担当の田島篤史を研究分担者として新しく迎える。田島は当時の印刷物を文献学的な立場から研究しており、メディアと社会的周縁者の関係を対象とする本研究に適切な人材である。田島は、昨年度の第66回日本西洋史学会大会の小シンポジウム「魔女研究の新潮流」にはパネラーとして参加しており、「中・近世帝国都市ニュルンベルクにおける魔女・メディア・悪魔学」という題目で研究を報告している。 フランス領域については、研究代表者が従来から専門の一つとする地域でもあることから、研究代表者がフランスに一層力を傾注した研究を進める。 平成29年度は、マイクロフィルム史料のデジタル化を進める。また11月に太成学院大学において共同研究会を行うとともに、公開シンポジウムを開催して研究成果を広く一般に公開する。研究最終年度である平成30年度は、研究全体を取りまとめる。共同研究会を開催して研究の情報を共有し、研究成果の出版に向けて取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入したマイクロフィルムをマイクロフルムスキャナ・リーダープリンタでデジタル化し保存する際、その作業を学生にしてもらい謝金として支出する計画であったが、平成28年度はこれを進めることができなかった。また、これにともなって必要なCD等の保存媒体の購入を行えなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、マイクロフィルムのデジタル化と保存を進めるとともに、共同研究会と公開シンポジウムの開催に向けて準備をすすめ、助成金の有効な使用を進めていく。
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