研究課題/領域番号 |
16K03145
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研究機関 | 太成学院大学 |
研究代表者 |
黒川 正剛 太成学院大学, 人間学部, 教授 (30342231)
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研究分担者 |
楠 義彦 東北学院大学, 文学部, 教授 (20234429)
小林 繁子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20706288)
谷口 智子 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (00363911)
福田 真希 中部大学, 全学共通教育部, 講師 (00711160) [辞退]
田島 篤史 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (40802765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会的周縁者 / メディア / 魔女 / 宗教改革 / 植民地 |
研究実績の概要 |
平成29年度は前年度の研究結果を踏まえて各分担領域において研究を進めた個別事例を「近代化」との関わりの中で分析した。近世のヨーロッパ及びラテンアメリカにおいて共通する社会的周縁者、すなわち他者として魔女を研究対象として焦点化しつつ、犯罪者との比較検討も行い、社会的周縁者の創出とメディアの関連性について研究を行った。 9月17日(日)には、黒川正剛が日本宗教学会第76回大会(東京大学)において「魔女とメディア-近世キリスト教社会の他者表象」という題目で研究発表を行った。 11月18日(土)には、研究代表者が所属する太成学院大学を会場にして共同研究会を行い、研究の進捗状況を相互に報告して研究成果の共有化をはかった。翌19日(日)には、科研費の公開シンポジウム「魔女とマス・メディア-ヨーロッパ近世の他者のイメージをさぐる」を太成学院大学において開催し、研究成果を広く社会に還元することに努めた。黒川が「魔女はなぜ信じられるようになったのか?」、小林繁子が「犯罪者と悪魔-近世ドイツの印刷メディアから」という題目で研究報告を行い、楠義彦がコメンテーターを務めた。また、マイクロフィルム史料「ヨーロッパ・アメリカ魔女文献コレクション(Witchcraft in Europe and America: Primary Source Media)」から、16・17世紀に出版された悪魔学書やパンフレットを数点選び、その一部を印刷し、日本語訳をつけたものをシンポジウム会場に展示、一般来場者に見学していただいた。シンポジウムの内容は、黒川・小林・楠共著「魔女とマス・メディア-ヨーロッパ近世の他者のイメージをさぐる」(太成学院大学紀要』第20巻、2018年3月)において発表した。 さらにマイクロフィルム史料のデジタル化を行い、メンバー間で共有を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、本年度の共同研究会を 11月18日(土)に実施し、研究の進捗状況をメンバー間で共有することができた。当日は、黒川正剛による研究会の趣旨説明のあと、小林繁子が「印刷メディアに見る犯罪者像」、楠義彦が「魔女とメディア」、谷口智子が「リマの異端審問」、田島篤史が「誰が『魔女への鉄槌』を書いたのか?-二人のドミニコ会士をめぐる作者の問題」を発表、質疑応答を行った。最終年度である次年度の研究の方向性についても議論し、共同研究の一定の結論を出すことを目指して研究に取り組むことを確認することができた。 次に、翌日の19日(日)、公開シンポジウム「魔女とマス・メディア-ヨーロッパ近世の他者のイメージをさぐる」を開催することができた。約60名の一般来場者がお出でになり、研究発表後、フロアとの間で活発な質疑応答が行われた。研究成果を社会へ還元することができた。またシンポジウムに合せて、マイクロフィルム史料の一部を印刷したものを解説・訳を付け数枚のポスターを作成し、シンポジウム会場に掲示し一般来場者のために供することができた。シンポジウムの報告は、『太成学院大学紀要』に発表することができた。 また、マイクロフィルム史料のデジタル化を進めることができ、CD保存したものをメンバー間で共有することができた。さらに、研究に必要なマイクロフィルム史料も数点追加購入することができた。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル化したマイクロフィルム史料の解読と分析を行うとともに、これまでの二年間の研究成果をふまえ、研究全体のとりまとめを行う。 魔女を社会的周縁者の中核として位置づけ研究を進めてきたが、犯罪者、ユダヤ教徒、インディオなど社会的周縁者は細分化しうるため、社会的周縁者を網羅的に研究するのではなく、対象を絞り込む。また三つ挙げていたメディア(「知識人・当局の発する規範的メディア」「民衆に発するメディア」「裁判等の記録」)についても、絞り込みを行う。これらの問題については平成30年7月に予定している共同研究会でメンバー間で意見交換し方向性を決定する。 また、本研究をまとめるために不足しているマイクロフィルム史料や書籍を購入する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究内容の社会的還元であるシンポジウムの開催に力を入れたこともあり、マイクロフィルム史料のデジタル化は進めることができたものの、十分とは言えなかったために次年度の使用額が生じた。 次年度は最終年度であり、研究の一定の結論を出す必要がある。そのため、共同研究に携わる各メンバーの進捗状況に応じて、新たにマイクロフィルイム史料や書籍を選別して購入する。また、デジタル化にあたり、学生に援助してもらうので、その謝金としても使用していく。
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