研究課題/領域番号 |
16K03147
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
佐藤 公美 甲南大学, 文学部, 准教授 (80644278)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中世イタリア半島 / 抵抗 / 政治文化 / 反教皇庁反乱 / マルケ / 反ヴィスコンティ反乱 |
研究実績の概要 |
中世イタリア半島で個々の国家的枠組みを超えて展開する抵抗の政治文化の解明という研究目的に即して、平成28年度は14世紀の具体的事例研究の対象を特定することを第一の目的とし、研究状況と史料状況の調査を行った。まず日本で入手できる研究文献と刊行史料による基礎的情報の収集を行い、9月にイタリアとスイスへ出張を行い専門研究者との打ち合わせを行った。イタリア各地の地域史史料と文献を豊富に所蔵するミラノ・カトリック大学等で資料調査を行い、その結果、1370年代中部イタリアで反教皇国家反乱が続出し、かつ現状では十分な研究の行われていないマルケ地方に一つの焦点を合わせることができた。また、これと連結するイタリア半島北部の反ヴィスコンティ反乱についても調査を進めた。さらに、本研究の国際的還元を目指す国際交流事業として、15世紀イタリア半島政治史の専門家であるパルマ大学のマルコ・ジェンティーレ氏の日本招聘を計画し、9月に同氏と研究打ち合わせを行った。また、イタリア・スイス大学のルイジ・ロレンツェッティ氏とロベルト・レッジェーロ氏、及びミラノ大学のアンドレア・ガンベリーニ氏と面会し、イタリアと周辺地域の研究状況についての教示と研究計画についての助言を受けた。イタリア・スイス大学では京都大学名誉教授の服部良久氏、九州大学専門研究員(2016年9月現在)の大場はるか氏と同席し、今後の国際研究協力の可能性についても話し合った。これらを受け、2017年3月にはマルケ州アンコーナ市とアスコリ・ピチェーノ市の国立文書館と市立図書館において未刊行史料と文献調査を行い、関連史料の伝来と所蔵状況を確認した。教皇による特許状の集成、都市評議会の決議集及び議事録、教皇代理法廷の裁判史料、年代記のマニュスクリプト等が挙げられ、これらによって都市と教皇国家組織双方の史料を検討する見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記したように、マルケ州の反教皇庁反乱に対象の一つを特定し、史料状況と地域史の研究状況を確認できたことから、交付申請時に平成28年度の目的として挙げた、史料状況の調査と研究対象の限定という第一の目的はおおむね達成されたと考える。その他については当初の計画よりもやや遅れている点と、当初の計画以上に進展した点の双方があり、全体としてはおおむね順調に進展したと考える。やや遅れているのは最新の研究文献の消化であるが、この理由として年度終了直前の2017年に刊行された反乱研究の論文集をはじめ、年度中または近年に本研究課題に関連する文献が多く刊行されたことが挙げられる。これは本研究課題がヨーロッパの最新の研究動向に接続する可能性を開くものであるため、着実な消化のために適切な時間を配分していきたい。 一方、マルコ・ジェンティーレ氏を招聘しての講演会またはシンポジウムによる国際交流実施計画は、当初の計画よりも進展した。これは報告者が本研究計画の最終年度に在外研究を予定することとなったため、当初最終年度に予定していた招聘計画を二年目に繰り上げ、研究打ち合わせ等の準備を早期に始めたためである。これに応じて、平成28年度は最終年度に向けての国際交流計画を練り直し、この面では全体的に一定の進捗が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果と課題を受けて、今後の研究の推進は以下の方策に従って進める。 (1)マルケ州現地での史料調査を確実に進める。平成28年度中に確認できた史料に加え、アスコリ・ピチェーノ国立文書館のフェルモ・セクション(在フェルモ市)の調査も進める。最終年度の在外研究中の史料調査を有意義に進められるよう、マルケ州内の史料状況の確認と史料収集を進め、刊行史料を合わせ基本的な分析を進める。平成29年度は通常の校務との兼ね合いを考えると、海外出張調査の日数が限られることが予想されるため、短期出張調査の効率化と文書館との通信による資料・情報収集を有効に活用する。 (2)平成29年度に研究文献の消化を計画的に進める。 (3)マルコ・ジェンティーレ氏の招聘による講演会またはシンポジウムを平成29年度に実施する。内容については氏と十分な打ち合わせをすでに進めており、本研究計画の長期的パースペクティヴに基づく位置づけを目指す。翌年度に在外研究を予定しいているため、平成29年度の日本でのジェンティーレ氏との議論を受けて、その成果をイタリア現地に還元し本研究計画の展開を目指す国際交流の機会をイタリア現地で設けることを計画している。この目的に合わせて、日本での議論を国際的展開に向けてに実質化することに焦点を当て、招聘計画の実施を進める。 (4)上記(1)~(3)の成果を受け、最終年度にはイタリア現地で未刊行史料の集中的調査を行い、同時にイタリアおよびヨーロッパでの国際研究交流を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
時期や場所により、調査目的の海外出張の際の航空運賃や滞在費が相対的に低くなった。また校務等の日程により、海外出張の日数が短くなったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は校務負担との兼ね合いを考え、作業効率化のため、データ整理や招聘事業として行う講演会またはシンポジウム補助の業務委託を行い謝金を支払う。
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