研究課題/領域番号 |
16K03147
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
佐藤 公美 甲南大学, 文学部, 教授 (80644278)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 中世イタリア半島 / 抵抗 / 政治文化 / 反教皇庁反乱 / 八聖人戦争 / マルケ / フェルモ |
研究実績の概要 |
昨年度中にマルケ地方の1370年代の反教皇庁反乱に一つの対象を特定し、刊行史料の収集と未刊行史料所蔵状況の調査を行ったことを受け、2017年度はこのマルケ地方の反乱の概況を主として調査・分析し、掘り下げて検討すべき課題の設定に努めた。続いてイタリア現地での資料調査を昨年度に継続して行い、8月7日から8月12日にかけてアンコーナ国立古文書館、フェルモ国立古文書館で未刊行史料の調査と一部写真撮影、文献調査を行った。 2017年度に中心的な分析対象としたのは都市フェルモの事例である。上記のマルケ地方の反乱は、フィレンツェと教皇庁の間で戦われた八聖人戦争の一環として開始し、当初はフィレンツェの支持とプロパガンダの下に、その同盟者であったミラノのヴィスコンティ家との緊密な結びつきの下に進展した。フェルモでは、ヴィスコンティの傭兵隊長としてフィレンツェ・ミラノ陣営で反乱を指導したリナルド・ダ・モンテヴェルデがシニョリーア支配を打ち立て、フィレンツェと教皇庁の講和成立後、フェルモの反シニョリーア反乱によって排除された。このようなリナルド・ダ・モンテヴェルデの動向は、個人の人的関係、キャリア形成、婚姻関係、空間的移動などによりミラノ、フィレンツェ、教皇国家のマルケを結んでいるという点において、イタリア半島内の領域国家を超えた政治的抵抗の広がりに注目する本研究にとって極めて興味深い事例を提供する。また、政治的抵抗の指導者から、「暴君」として抵抗を受ける対象へと短期間に変遷を遂げたという点においても抵抗の政治文化とシニョリーアの関係に示唆を与える。この研究の中間報告として、9月30日第7回中・近世ヨーロッパ史研究会において研究報告「14世紀マルケにおける反教皇反乱と『暴君』」を行った。 また、2017年度には本研究の成果の一部を反映したコメントをシンポジウム「南北朝『内乱』」で行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マルケ地方の反乱に関連する史料の収集と分析に関してはおおむね順調に進展し、2018年度の課題を明確にすることができた。研究文献の消化に関しては、改善の余地があったものの一定の進展があった。一方、2017年度中に計画していたパルマ大学準教授マルコ・ジェンティーレ氏の招聘計画に関しては、同氏の2017年度の新たな校務との調整が難しくなったため、年度内の実現を見合わせることとなった。このため全体としてやや遅れつつ進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年10月より本務校での在外研究期間に入るため、イタリア滞在を活かして、第一にマルケ地方および関連するフィレンツェ、ロンバルディア地方での古文書館での未刊行史料調査を集中的に進める。また、随時専門家の助言を受け、討論を重ねつつ実証研究を進める。 一方、2017年度はマルコ・ジェンティーレ氏の校務上の都合により同氏の招聘計画を見送ったが、2018年度は研究代表者の在外研究のため日本への招聘実施に事務上及び準備上の困難がある。そのため同氏と緊密な相談を重ねつつ、まずはイタリアでの成果公表と学術的議論の機会を模索し、次いで国際交流実現の方法について検討し確定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に予定していたパルマ大学のマルコ・ジェンティーレ氏の招聘計画が年度内に実現できなかったため、招聘必要経費に相当する金額が未使用となった。2018年度は研究代表者の在外研究のため日本への招聘実施が難しく、そのため、同氏の都合と調整しつつ、研究期間の延長申請による招聘計画の2019年度実施するか、または2018年度内のイタリアでの成果公表と学術的議論のための機会設定などを実現することにより、元来の招聘計画の趣旨に沿って同様の成果が期待される方法で使用する予定である。
|