研究課題/領域番号 |
16K03155
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10249906)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 手工業生産 / 須恵器 / 瓦 / 緑釉陶器 / 考古学 / 文献史学 / 自然科学的分析 / 篠窯跡群 |
研究実績の概要 |
本研究では、古代から中世への変質過程の解明を目指して、これまで考古学ではあまり注目されてこなかった摂関期の瓦陶兼業窯について基礎研究を行っている。とりわけ、平安期の一大窯業生産地である京都府亀岡市の篠窯跡群のうち、西山1号窯を詳細に分析してきた。当該年度には、窯の出土遺物の考古学的分析を深めるとともに、それらの文章化や関連図版の作成を行った。 その一方で、自然科学の諸分野と協業しつつ検討を深めた。古地磁気測定に関しては、炭素14年代測定や考古学的なデータとも突き合わせて、これまでにない精度で時期の判別に有効であることがわかった。今後は、同種の方法により、平安期に独自の様相を示す各地の窯業生産地においても、より確かに操業年代を探ることができるものと考える。 また、胎土分析の結果では、瓦と須恵器に関してはあまり胎土に差違がなかったが、緑釉陶器にはやや異なる胎土の選択していることが明らかとなった。これにより、丹波での新たな瓦生産が須恵器生産の土台に載っていた点など、その特質がより鮮明となった。その他にも、炭化材の樹種同定や鉛同位体比分析などの成果も加えて、いくつかの新たな知見を得ている。 この他に、研究課題に関する研究会を本年度は2回を開催した。昨年度まで主に考古学や自然科学の分野での研究を取り上げたことから、本年度の1回目は主に文献史学からの研究に焦点を当てて、古代から中世への変質する平安時代の地方財政研究や大規模造営事業の問題などについて研究整理などを試みる発表を得た。2回目は、歴史時代土器研究会との共催の形で、出土品の実物を見学する機会を設けつつ、西山1号窯出土の須恵器や瓦・緑釉陶器の整理結果について阪大の大学院生などを中心に研究発表を行い、議論を深めた。また、西山1-1号窯にみられる小型三角窯の復元実験を試みるプロジェクトに本年度も参画してさらなる情報を収集した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料(試料)の科学的分析を外部機関に委託していたが、その機関の事情によりやや当初の予定よりもデータの受け取りが遅れることになった。それらの成果をふまえて全体的な研究成果のとりまとめも行う予定であったが、結果的に全般的な作業もやや遅れることになった。そのため、年度内に完了を予定していた、全体的な本研究の報告書についてもおおむねの原稿は整ったものの、完成には至らなかった。そのため、1年間の研究期間の延長を行うことにした。ただ、その他の考古学による個別分析の成果はほぼ出そろっている。
|
今後の研究の推進方策 |
全体的な本研究の最終報告書について、昨年度内に作成を予定していたが、いくつかの懸案事項が残ったために、完成には至らなかった。しかし、1年間の延長の承認を受けたことから、その期間においてさらに補足的に文献史学あるいは分析諸科学などを含んだ検討を追加して試みることにする。それらをもとにして考察などの原稿を執筆・編集するとともに、全体的な取りまとめをして報告書として完成することを本年度の予定としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
外部委託の分析について分析機関の事情により結果の判明が遅れたために、それをふまえた最終報告書の編集・発行も予定よりもややずれ込む結果となった。今後は、最終的な成果の取りまとめを行い、その報告書の編集・発行などに残額を用いる予定である。
|