研究課題/領域番号 |
16K03158
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
槙林 啓介 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 准教授 (50403621)
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研究分担者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
米澤 剛 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 准教授 (90402825)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 製塩 / 地形環境 / クロスナ層 / 瀬戸内海 / 情報地質学 |
研究実績の概要 |
1年目は、本研究の主要な対象である宮ノ浦遺跡の調査および分析を主に行った。宮ノ浦遺跡は、愛媛大学と上島町が共同で発掘調査を実施しており、これまでに6次の調査を行っている。第6次調査では、本研究も海岸地形の形成とその利用に関わる調査や分析を担った。目的1に掲げるクロスナ層の理解を遂行するために、宮ノ浦遺跡第15トレンチ検出のクロスナ層の観察およびサンプリングによる各種分析を行った。各種分析では、粒度分析、C14年代測定、花粉分析、珪藻分析を計画し、後者二つでは対象試料が検出されなかった。前者二つでは良好な結果が出た。それにより、これまで宮ノ浦遺跡の立地は海岸砂丘上と考えていたが、粒度分析から浜堤であることが明確になった。これにより、砂丘ではなく浜堤の形成と浜堤上に形成されるクロスナ層の関係を解明する必要が出てきたことは従来にない観点となった。クロスナ層の形成メカニズムそのものの研究についても、気候変動との関係では説明できないことから、研究課題として指摘できるところとなった。目的2に掲げる地下構造の理解では、宮ノ浦遺跡のこれまでの調査(断面図)を整理し、3次元地質モデリングのための基礎データを整える作業を行った。さらに国土地理院発行の基盤地図情報5mメッシュ(標高)を用いて、宮ノ浦遺跡を含む3次元地形図(精度5m)を作成した。その精度を向上させるために,Noumi(2003)のRIPE法を用いて実測地形図から0.5m精度の3次元地形図作成を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的であるクロスナ層の解明の基礎研究にあたる、クロスナ層の各種分析は順調に進んでいる。今年度の分析結果は、従来の海岸砂丘とクロスナ層形成に関わる見解とは異なるものであり、浜堤上クロスナ層形成メカニズムについては新たな研究課題として浮上した。このことは、瀬戸内海島嶼部の海岸利用に新たな視点を投じるものになる。また、宮ノ浦遺跡の現地調査では海岸地形の変化に関する基礎データを得られたことは考古学のみならず地質学などの分野とも今後さらに協働すべき課題を出すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき宮ノ浦遺跡のクロスナ層試料のサンプリングと各種分析を実施する。分析結果は、従来の砂丘に形成するクロスナ層に関する調査研究と比較検討する必要が出てきた。瀬戸内海島嶼地域の沿岸と遺跡に関するこれまでの研究や、現在実施中の発掘調査との現地情報交換を得ながら、クロスナ層の解明に当たる。同時に3次元地質モデリングのためのデータも得るような発掘調査とモデリング解析を進める。次年度も宮ノ浦遺跡に関わる分析は継続して実施する。まず今年度サンプリングしたクロスナ層の試料のうち、さらに粒度分析とC14年代測定を行うための経費、および次年度の発掘調査時にサンプリング予定のクロスナ層試料の各種分析費用を計上している。また、これに関わる現地調査の旅費や分析結果の研究討議や3次元復元に関わる研究討議の開催のための旅費を合わせて計上している。
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次年度使用額が生じた理由 |
宮ノ浦遺跡におけるクロスナ層等の試料サンプリングと各種分析は、予想以上に良好な方法となっている。分析の種類のみならず、より多くのサンプリング数があることが望ましいと考えている。ただし、分析には、クロスナ層とその上下層をセットにして行う必要があるなどの理由から、分析にかかる経費を有効に活用するために、今年度と次年度との配分について再検討を行った。また、そのために現地上島町等への旅費についても、当初計画を見直す必要が出てきた。
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次年度使用額の使用計画 |
クロスナ層にかかわる分析には、粒度分析、C14年代測定のほか、必要に応じて花粉分析や成分分析も含まれる。また理由でも述べたように、クロスナ層とその上下層がセットになって分析する必要があることから、一定の経費を確保しておく必要がある。次年度使用額については、そのほぼすべてを分析費用やサンプリングのための旅費に充てる計画である。
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