本研究は、アンデス文明形成期(特にその中期・後期)における社会統合の核としての神殿と、それを支えた近隣住民らの居住地等に関して、主にその地理的関係を探るものである。ペルー北部アンカシュ県サンタ郡のネペーニャ川下流域を調査地とし、2016-2017年度に遺跡踏査、ドローンによる三次元測量、および光波測量を実施した。対象時期の遺跡群とその位置関係を確認し、また表採遺物から遺跡の属性についての情報を得た。2018年度に当初の予定通り「まとめと成果発表」を進め、代表者が2013年度までに発掘してきた2つの神殿遺跡であるセロ・ブランコとワカ・パルティーダの研究成果と総合する過程において、計画を1年延長する必要が生じた。2016-2017年の踏査で確認した都市的複合遺跡スーテ・バホをはじめとする遺跡群の大半は形成期後期に属すると比定されたが、これに対応する時期の年代測定値が上記2つの神殿遺跡では不足していたのである。そこで代表者による既発掘の資料から形成期後期層の炭化物を5点抽出し、年代測定を実施した。その結果、形成期後期後半に関しては、これまでの年代測定値と一致したが、形成期後期前半と目されていた建築部位と土器群の一部に、時間的位置づけの再検討を要するものが出てきた(今後、形成期中期および後期前半の神殿建築形状に関する仮説に若干の修正を施す可能性がある)。今後2つの神殿遺跡とスーテ・バホ複合との関係を多角的に探る際、神殿遺跡の編年に関する補足調査も行う必要があるだろう。なお今年度前半の研究の一部は、校正中であった論文等に反映させた。
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