研究課題/領域番号 |
16K03163
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
安藤 広道 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (80311158)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公共考古学 / 公共歴史学 / 戦跡考古学 / 歴史実践 / 教育資源 / 学習資源 / アジア太平洋戦争 / 戦争遺跡 |
研究実績の概要 |
軍事遺跡の考古学的調査としては、慶應義塾大学日吉キャンパス内の連合艦隊司令部地下壕と鹿児島県鹿屋市第五航空艦隊司令部地下壕の補足的な調査を実施したほか、2018年11月に神奈川県座間市高座海軍工廠芹沢地下壕の整備事業が完了したことを受け、12月から同地下壕の本格的調査を開始した。また、併行して熊本県錦町人吉海軍航空基地の地下壕群と、逗子市海軍航空廠池子工場地下壕群の予備的な調査も実施した。いずれの調査も、壕内の諸特徴の記録に加え、360度カメラによる画像・映像の撮影を行った。 これらの調査の成果を用いた実践的取り組みとしては、学生、教員、一般を対象とした連合艦隊司令部地下壕の見学会を7回実施した。そこでは単に成果を伝えるだけでなく、見学後の討論やアンケートを通じて、調査で明らかになった地下壕のさまざまな諸特徴が、どのような歴史の語りと結びつく傾向があるのかを把握することに努めた。 また、調査の成果を盛り込んだ講演会を年度内に6回(慶應義塾内2回、大阪経済大学、神奈川県茅ヶ崎市、座間市、鹿児島県鹿屋市各1回)行った。うち2回(慶應義塾内、座間市)では、360度画像・映像を用いたVR体験のデモも実施した。講演においても成果を一方的に話すことを避けた「対話型講演」ともいうべき方法を取り、研究成果が聴衆にどのように受け止められているのかを把握することに主眼を置いた。 なお、これらの取り組みと併行して、当初計画通り、調査・研究の成果をまとめた報告書を年度内に刊行するための準備を進めていたが、11月になって座間市芹沢地下壕の本格的な調査が可能になったこと、12月に第五航空艦隊司令部地下壕に関わる重要な新知見を得たこと、さらに、3回の講演を3月下旬に行わざるを得なかったことなどから、補助事業期間延長承認申請書を提出し、これらの成果を含めた研究成果報告書を2019年度に刊行することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
考古学的調査及びその成果を用いた実践的取り組みに関しては、調査対象の変更、追加等があったものの、全体としては当初計画以上の進捗状況と考えている。 一方、そもそも地下壕という遺構が壕内と外気の温度・湿度の差の関係で、晩秋~春の限られた時期にしか調査ができない対象であることに加え、座間市高座海軍工廠芹沢地下壕の整備事業が11月に完了したこと、12月に鹿屋市第五航空艦隊司令部に関わる航空写真等の新資料を見出したこと、さらに逗子市から12月になって申請者の元に海軍航空廠池子工場跡の保存・活用をめぐる相談があったことなどが重なり、12月以降にも複数箇所で調査を行う必要が生じた。さらにこれらの調査の実施と関係し、その成果に基づく講演会、見学会等の実践的取り組みを3月に複数回実施することになった。そのため、当初予定していた研究成果報告書の刊行を次年度に延期し、これらの調査及び実践的取り組みの成果を報告書に盛り込むことにした。 この報告書の刊行の延期を踏まえ、進捗状況の評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2018年度12月以降に実施した調査、及び講演、見学会等のデータ整理を進めているところであり、これらの成果がまとまり次第、研究成果報告書の編集、刊行を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度12月以降に複数の遺跡の調査、及び講演・見学会等を実施したため、これらの成果を研究成果報告書に盛り込むには、刊行を2019年度に延期する必要が生じた。未使用額は、調査等のデータ整理にかかる経費と、研究成果報告書の編集、刊行、発送にかかる経費である。 2019年度は、調査等のデータ整理を速やかに進め、可能な限り早い時期に研究成果報告書の編集、刊行、発送まで完了させる予定である。
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