研究実績の概要 |
前年度に引き続き、茨城県工業技術センター笠間陶芸大学校(茨城県笠間市)と東京大学(代理人:東洋文化研究所所長)の間で業務委託契約を交わして、前年度にディヤルバクル博物館(トルコ)より日本に持帰ったサラット・テペ遺跡の土器資料等の理化学的分析を実施した。おもな成果は以下の通りである。 ①サラット・テペの土器片を切断して、マイクロスコープによる断面の組織観察、顔料部・胎部の元素組成分析および鉱物組成分析を行ったところ、ほとんどの試料がほぼ同様の傾向を示し、これまでの一連の分析成果と同じく、900~1000℃の比較的高温、800~900℃の中温、800℃に届かない低温の3つの焼成温度帯に分類できた。②早稲田大学本庄キャンパス(埼玉県本庄市)で焼成実験した復元土器についても分析したところ、比較的短時間に還元焔で焼成されていたことがわかった。③サラット・テペで出土した顔料粉末の元素組成を参考にして復元顔料を製作して、850℃, 900℃, 950℃, 1000℃の酸化焔焼成、および900℃の還元焔焼成したところ、おおむね熔着したことから、サラット・テペの彩文土器は900~1000℃で焼成されたとしたこれまでの分析成果を裏付けることになった。 2017年8-9月、トルコ共和国カマンにあるアナトリア考古学研究所のカマン・キャンプに出張し、同キャンプ敷地内において彩文土器の復元焼成実験の準備作業を実施した。成果として、キャンプ周辺の村人らの協力により、村の廃虚に使用されていた日干しレンガを採取してキャンプへ移送して、同空き地に昇焔式土器焼成窯の燃焼室部分を構築した。およそ100丁ほどの日干しレンガを用いて、半地下式の鍵穴型プラン土器焼成窯を構築し、燃焼室上端まで築窯して作業を終了した。同窯の大きさは、長軸約240センチメートル、短軸約180センチメートル、高さ約100センチメートルとした。
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