研究実績の概要 |
前年度に引き続き、茨城県工業技術センター笠間陶芸大学校(茨城県笠間市)と東京大学(代理人:東洋文化研究所所長)の間で業務委託契約を交わして、サラット・テペ遺跡(トルコ)の土器資料等の理化学的分析を実施した。おもな成果は以下の通りである。 ①サラット・テペで出土した日干しレンガをもとにした復元粘土試料を小型電気炉にて800℃, 850℃, 900℃, 950℃, 1000℃の酸化雰囲気で焼成したところ、いずれも赤褐色に発色し、同試料を900℃, 950℃, 1000℃の還元雰囲気で焼成したところ、いずれも灰白色の発色となった。両者の鉱物組成において、酸化焼成ではヘマタイトが生成されたのに対して、還元焼成では生成されていないことが発色の違いに現れていると推定された。②サラット・テペ出土の顔料粉末をもとにした復元顔料試料を、900℃, 950℃, 1000℃で酸化雰囲気および還元雰囲気で焼成したところ、酸化焼成で赤褐色~黒褐色、還元焼成で黄褐色~黒褐色になった。温度や保持時間に関係なく、顔料中のマンガンの比率が高くなるにしたがって、復元顔料は黒味を帯びる傾向にあることがわかった。③サラット・テペ出土の土器片のうち外面と内面で素地の色調の異なる6試料について、焼成時に受けた熱量の差について分析したところ、彩文の元素組成は3種類程度、胎土の鉱物組成は5種類程度に分けられる可能性を指摘できた。 同時に、前年度に引き続き、トルコ共和国カマンにあるアナトリア考古学研究所のカマン・キャンプ敷地内において、土器焼成窯構築の作業を継続するつもりであった。しかし、受入側の事情により、船便で現地へ実験資材を搬入することができなかったため、本年度における現地実験は断念した。現在、同キャンプにおいて、同土器焼成実験窯は保護シートをかけた状態で保管されている。
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